教授で子持ちのマスター
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「あ! 松菜さん、多田さん! こちらです」
蒼井えりかは、こちらに手を振って応じた。
以前、彼女と最初に対話した大学の時計塔。その根元で、彼女はハルトたちを待っていてくれた。
「わざわざありがとう。待たせちゃったかな?」
「いいえ。全然平気ですよ」
ハルトへ笑顔を向けながら、えりかは背後で腕組みしながら笑いかける。
「それにしても、やっぱり大学って大きいなあ」
「そうですね。この大学は、沢山の建物で出来ていますから」
えりかは笑顔を見せながら、大学のキャンパスを進んでいく。
丁度先日大型連休を終えたばかりの大学は、大勢の学生が溢れかえっていた。
それぞれが嬉しそうだったり憂鬱そうだったりと様々な表情で、それぞれ語り合っていたり一人で黄昏ていたりしている。
えりかの足は、すぐ近くの建物へ向かっている。
「蒼井のマスターも、松菜さんに会うのを楽しみにしています」
「そうなの? それは嬉しいね」
えりかはガラス戸を押し開けて、ハルトとコウスケを先に通す。そのまま先導し、近くのエレベーターへ向かった。
綺麗に管理の行き届いたその建物は、歩くたびにコツコツと音が響く。えりかがエレベーターの下ボタンを押し、そのまま地下深くの階層へ降りていく。
「地下なんだね」
「はい」
「地下ってどの研究室だったか?」
「すぐに判りますよ。着きました」
エレベーターが開く。
すると、地上階とは打って変わって、その衛生さがほとんど無くなっていた。
まるで墓の中に広がる世界なのか、と思ってしまう。
蛍光灯はひび割れ、少ない命の灯火のように光を作り上げている。建物内部の狭い通路と
「なんじゃごりゃ……」
地下フロアに足を踏み出して、まず唖然としたのはコウスケだった。
埃が舞うその状況で、
「これが、大学の研究室……? 随分と低予算な場所なんだね」
「普通はこんなんじゃねえんだがな」
コウスケはそう言って、えりかを見やる。
「……本当にこの階で合ってんのか?」
「はい。このフロアですよ」
この場がたとえ綺麗な場所でも変わらないような足取りで、えりかは進んでいく。
ハルトとコウスケは顔を見合わせ、半信半疑ながら進んでいく。
「うおっ!」
歩いてまだ数歩だというのに、コウスケが情けない悲鳴を上げた。ハルトの体にしがみつく彼を振りほどき、「何?」と呟く。
「何か、足元変なの通ったんだよ」
「……ネズミじゃないの?」
「あんなにデケえネズミがいるかっての……!」
「デカいネズミ?」
ハルトはその言葉に疑問符を浮かべながら、さらに進んでいく。
「ああ、そうなんだよ! なんかこう……膝ぐらいまであるよう
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