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募金
第三章

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 県庁から学校費を回収しそれからだった、募金を募ったが。
「まさかな」
「ああ、これだけ集まるとはな」 
 黒田も大久保もその額に目を丸くさせていた。
「八千円か」
「県庁の学校費と同じだけか」
「大久保さんは八千円の借金があったが」
「学校費を回収したもので消せる」
「金貸し達はいいと言っているが」
 大久保の志を知っている彼等はだ。
「それも出来る位だ」
「それでも八千円残る」
「これは凄いぞ」
「こうなるなんてな」
「いや、凄いな」
 二人共驚くばかりだった。
「大久保さんは怖いとか厳しいとか言われて」
「好かれていなかったが」
「その大久保さんにか」
「これだけ募金してくれるなんてな」
「これだけ大久保さんをわかっている人がいるのか」
「そして大久保さんのご遺族を想う人が」
「だから言ったじゃないか」
 伊藤は驚いている二人に笑って話した。
「見ている人は見ていてな」
「心ある人も多い」
「そうなんだな」
「そうだよ、世の中は捨てたものじゃないんだよ」
 ここでもこう言うのだった。
「だからな」
「八千円も集まってか」
「大久保さんのご遺族を助けてくれるか」
「そうだよ、それでこれで」
 八千円集まった募金でというのだ。
「大久保さんのご遺族は暮らせるな」
「ああ、充分にな」
「それが出来る」
「それは何よりだよ」
 伊藤はここでも明るく笑った、そしてだった。
 大久保の遺族は無事に暮らせる様になった、それを見て黒田と大山は思った。
「これだけ大久保さんをわかっている人がいて」
「心ある人がいる」
「本当に世の中捨てたものじゃないな」
「伊藤さんの言う通りにな」
 こう話すのだった、そして大久保の墓に参ってそのことを伝えた。そのうえで戻った二人の顔は実に晴れやかなものだった、伊藤はその二人を見てここでも笑顔になった。


募金   完


                    2023・8・14
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