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募金
第一章

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                募金
 大久保利通が暗殺された、この事件に政府は上に下への大騒ぎとなり事件の収束にあたりかつ再発防止の協議も行われた、それと共に。
「大久保さんのご遺族のことだが」
「そうだな、大久保さんは財産がない」
「借金をして政府の予算に入れていた位だ」
「借金はあるがな」
「財産なんてものはない」
「それではご遺族は暮らせない」 
 大久保の遺族、彼の家族だった者達のことも話された。
「今の政府があるのは大久保さんの力が大きいが」
「ぞの大久保さんのご遺族がこれでは生活に困る」
「流石にあの人のご遺族を路頭に迷わせる訳にはいかない」
「ここはどうするか」
「華族に列して職に就いてもらうににしても」
「お子さんの多くはまだ子供だ」
「当面の生活が必要だ」
 その為の金がというのだ。
「どうしてもな」
「何しろ財産が現金の百四十円だけだ」
「それに対して借金は八千円だ」
「しかも持ってる財産は全て抵当に入っているぞ」
「流石に大久保さんを知っている金貸しは皆金を返せとは言っていないが」
「だがこれでは大久保さんの奥さんもお子さん達も困る」
 また生活のことが話された。
「本当にどうにしかないとな」
「何とかならないか」
「そういえば」
 ここで大久保の同郷であり彼に引き立ててもらっていた黒田清隆が言った、顔立ちも髭も厳めしいが目の光は優しい。
「大久保さんは鹿児島県庁に学校費を寄付していたぞ」
「ああ、あれか」
 その話を聞いたやはり同郷の大山巌も応えた、その雰囲気が頼もしい感じである。
「八千円あったな」
「あれを回収してだ」
 黒田はさらに言った。
「大久保さんの遺族の人達に送ろう」
「そうするか、それと」  
 今度は大山が知恵を出した。
「募金を募るか」
「大久保さんのご遺族の人達の暮らしの為にか」
「そうしようか」 
 こう黒田に話した。
「ここは」
「そうするか。しかし」
 ここでだった、黒田は。
 難しい顔になった、そのうえで大山に話した。
「問題があるぞ」
「問題?」
「大久保さんは人気がない」
 このことを言うのだった。
「西郷さんは皆から慕われていたが」
「ああ、大久保さんはな」
 実は二人は西郷隆盛を吉之助さあ大久保を一蔵さあと言いそうになった、だが今は公の場であるのでそれは抑えたのだ。
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