第五話 忠の世界その四
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しかし彼も状況がわかっている。だからなのだ。
「まあ仕方ないな」
「好みは言っていられないということね」
「そういうことだ」
響鬼は口調はいつもの通り飄々とはしている。
しかしだ。それでもだ。
義仙を見据えたままだ。次第に間合いを詰め。
四人の鬼で一斉に攻撃を浴びせようとする。だが、
ここでだ。急にだった。
義仙はだ。構えを解いてこう響鬼達に言ってきた。
「いいわ、それじゃあ」
「それじゃあ?」
「ここで決着をか」
「いえ、それはまだよ」
こうだ。余裕の笑みで告げたのである。
「ここでそれを決めるのは勿体無いわ」
「勿体無い」
「何が言いたい」
威吹鬼と轟鬼が義仙に問うた。
「まさかここではなく」
「別の世界でというのか」
「私達の世界で決着をつけましょう」
これが義仙の言いたいことだった。
それを告げてだった。彼女は。
宙に浮かんだままでだ。足からだ。
姿を消していく。その中で響鬼達に告げた。
「門は既にあるわ」
「それは何処だ」
桐矢が鬼の姿で義仙人に問う。
「御前達の世界に行く門は」
「この橋の上よ」
そのだ。彼等が今いるそこのだというのだ。
「そこにあるわ」
「何だ、近いな」
それを聞いてだ。響鬼が言った。
「そこからか」
「来るといいわ。そしてそこでね」
「天草、そしてだな」
「そうよ。スサノオというのね」
義仙も響鬼達の言葉に合わせて言う。
「あの方もおられるわ」
「さて、今度はどういった姿で出て来るのか」
響鬼はもうスサノオのことを考えていた。
「そしてあちらの世界でどういった戦いになるのか」
「楽しみにしているのかしら」
「楽しみはしないさ」
響鬼はそれは否定した。少なくとも彼は戦いに楽しみや喜びといったものを見出す者ではない。それで言うのであった。
「だがそれでも」
「戦いはするというのね」
「ああ、そういうことさ」
「わかったわ。それじゃあ来るといいわ」
既にだ。義仙の姿は完全に消えていた。声だけが残っている。
その声で告げてだった。気配も消えた。
後に残ったのは鬼達だった。その鬼達にだ。
明日夢とあきらが駆けて来てだ。こう話してきた。
「あの、橋の上に」
「怪しい門が出て来ました」
「成程、言った通りだな」
元の姿に戻りながらだ。響鬼は。
二人の言葉に頷きだ。それからこう彼等に告げた。
「さっき女から聞いたよ」
「あの隻眼のですか」
「おかしな女に」
「うん、そうなんだ」
「橋の上にあいつ等の世界に行く門があるってね」
威吹鬼と轟鬼も元の姿に戻っている。その姿で明日夢とあきらに返す。
「言った通りだね」
「少なくともあいつは嘘は吐いていないんだな」
「
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