第一章
[2]次話
日本酒復権
京都の四条でだ。
永倉理人は居酒屋を営んでいる、この店は京都だけでなく日本の多くの名酒を揃えていることがウリである。
だが最近の店の品の売れ具合についてだ、彼は店の中で常連客である片岡仙太郎京都で有名な旅館の主である彼に言った。
「全く、皆ビールやら焼酎やらでな」
「日本酒は飲まへんのね」
「そうなんだよ」
ゴマシオ頭で色黒の皺だらけの顔で言った、身体は小柄で痩せている。
「これがな」
「お店の看板なのに」
「インターネットの店のサイトでも宣伝してるのにな」
日本酒の名酒を揃えていることをだ。
「飲む酒はな」
「ビールとかが多くて」
「ビールが一番人気でな」
そうしてというのだ。
「あと焼酎とかワインとかな」
「そうしたお酒ね」
「チューハイだのな」
「兎に角日本酒はあまりなのね」
「飲まれないんだよ」
「それは残念ね」
「店は繁盛していてもな」
和風の店のカウンターの中でだ、永倉は片岡に話した。
「折角の看板がな」
「無視されてるみたいね」
「こっちとしては残念だよ」
「折角美味しい日本酒揃えてるのにね」
「そもそもスーパーに行ってもな」
そうした店に行ってもというのだ。
「酒屋さんだってな」
「ビール多いわね」
「そうだろ、ここは日本でな」
そうしてというのだ。
「日本酒があるのにな」
「今一番飲まれてるのはビールでね」
「焼酎とかワインとか他の酒もよく飲まれててな」
「チューハイもね」
「それでな」
そうした状況でというのだ。
「日本酒は一番手じゃないんだよ」
「それが残念ね」
「日本人として、そしてな」
永倉はさらに言った。
「日本酒を揃えた店をやってる身としてもな」
「残念ってことね」
「ああ、もっとな」
嘆息する様にしてだ、永倉は片岡に話した。
「売れて欲しいな」
「それはね」
片岡は宇治の酒を飲みつつ応えた。
「飲んでみると美味しいし」
「実際に飲むとそうだろ」
「そうやと思うわ」
飲んでいての言葉である。
「折角美味しいのに残念よ」
「店でもサイトでも宣伝してるけれどな」
「まだ足りないのかも知れへんのね」
「そうかもな」
自分に問う様にして言った、そうした話をしてだった。
永倉は店の宣伝をしようとした、それで今日とは観光客も多いことからサイトや店の入り口の看板に英語や中国語等で日本酒のことを書いた、すると。
観光客が来る様になった、そのうえでたどたどしい日本語で言うのだった。
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