第三章
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警護の兵や店の者達も客達もくつろがせた、そしてだった。
ざるそばを召し上がられ店の者にこう言われた。
「これがざるそばというものだな」
「左様です」
言われてもやはり緊張してだ、店の者の一人が答えた。
「当店の」
「これまで食べたことがなかったが」
それでもと言われるのだった。
「実に美味いな」
「そう言って頂けますか」
「うむ、ただ食べ方だが」
太子はこちらのことも話された。
「つゆに漬けて食べるのは面白い」
「食べ方ですか」
「それを聞いても面白かった、だからな」
だからだと言われるのだった。
「実にな」
「満足されていますか」
「うむ、よいぞ」
こう言われて蕎麦をすすられる、侍従は店の奥からそうされている太子を見て店長に対して囁いた。
「何もなくて何より」
「はい、私達もです」
「そうだな、しかしだ」
侍従は太子を見て言われた。
「殿下が随分とくつろいでおられてな」
「満足して頂いていますね」
「何よりだ、だからな」
それでというのだ。
「我々も何も言うことはない」
「左様でありますか」
「うむ、だが殿下は周りにお優しい方だが」
普段からだ、侍従はこのことを常に太子のお傍にいるだけあってよく知っていた。
「誰にもとはな」
「左様ですね」
宮内省の周りの者達にも話した。
「民達にも」
「臣だけでなくな」
「民にもとは」
「気兼ねなく気さくにな」
その様にというのだ。
「対しておられる」
「お顔も目も穏やかで」
「実にいい、若しやだ」
侍従は気付いた顔になって言った。
「太子は非常に優れた君主の資質を備えておられるのやもな」
「そうですね、これは」
「陛下とはあり方が違いますが」
「それでもです」
「非常に穏やかで和やかで」
「我等も落ち着けます」
「そうだな、ではな」
侍従は最初の驚きの顔ではなくなっていた、非常に落ち着いた穏やかな笑顔になってそれを自覚して言っていた。
「今はこうしてな」
「見守りますか」
「太子を」
「そうしよう」
こう言ってだった。
太子が召し上がり終えられるのを見届けて店の外にでた、そしてこの時は何もなかったかの様にしてだった。
東京に戻り帝にお話すると帝はその龍顔をまずは顰められた、だが。
すぐに真面目なお顔になられこう言われた。
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