ある日の見滝原大学
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姉《ねえ》だぞ!」
少女は明るい笑顔でそう応じる。
「子供って分からねえ……!」
コウスケは頭を抱え出す。
とりあえず、自分の元にいても仕方ない。そう判断し、コウスケはこの少女を大学の事務局へ連れて行くことにした。幸い事務局はこの建物にある。
「みゃー姉はどこだ?」とテープレコーダーのように繰り返す彼女とともに事務局へ立ち入ったコウスケ。
すると。
「あ」
「え?」
そこには果たして、この後待ち合わせをする予定だったハルトの姿があった。
「ハルト? 何でお前ここに?」
「ちょっと予定よりも早く着いちゃったんだけど……」
ハルトは困った目つきで、彼の傍らに目を落とす。
ハルトの左手を握るのは、コウスケといるみゃー姉少女よりも幼い少女の姿だった。
それを見て、コウスケは思わず口走る。
「ハルト……お前、まさか……」
「何かとんでもない誤解してないかお前」
このまま警察へ通報しようかというところで、ハルトはコウスケを小突く。
一方、ハルトの連れている子よりも少しお姉さんなみゃー姉少女は、好奇の目で少女の頭を撫でていた。
「何でも、『おいたん』?を迎えに来たらしい。で、道端で泣いていたからここに連れて来た」
「おいたん?」
「御覧の通り、まだ舌足らずな感じだからね。俺だけじゃどうしようもないから、ここに連れて来た。今のところこの子の名前しか分からないし」
「ひなだお!」
ハルトが自分の話をしていることに気付いたのか、「ひな」らしき少女が元気よくコウスケに挨拶した。
「お前もかよ……オレも似たようなもんだ。オレの場合は姉貴だがな」
「ふうん……」
「よーしよし」
みゃー姉少女に頭を撫でられ、どうやらひなは彼女に懐いたようだった。その腰に抱き着き、騒がしくなっている。
その後、コウスケとハルトは事務員へそれぞれの事情を説明し、あとは向こうで引き継いでくれることとなった。
最新の大学の建物を出て、コウスケが両腕を伸ばした時。
「……日本の大学生ってのは子持ちが基本なの?」
「んなわけねえだろ! オレだって初めて聞いたわ!」
ハルトの大学への誤解がまた一つ、増えたのだった。
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