第一章
[2]次話
妹の学費
原満里奈は大学生である、日々学業とアルバイトに励んでいるが。
バイト代についてはだ、兄でサラリーマンの潤にこう言われていた。
「お前が使えよ」
「いいの?」
「あれだろ、お前の大学の学費にな」
小柄で黒髪をツインレールにした童顔の妹に言うのだった。
「してくれってな」
「そうだけれど」
「いいからな」
兄は言うのだった、黒髪をショートにしていて面長できりっとした顔立ちである。細く鋭い目と引き締まった唇で長身で痩せている。
「別に」
「そうなの」
「俺も働いているしな」
潤はまずは自分のことを話した。
「お父さんもお母さんもな」
「いるから」
「だからな」
それでというのだ。
「本当にな」
「いいのね」
「ああ、そう思うならな」
妹にこうも言うのだった。
「お前もな」
「私もなの」
「お前の家族にな」
「学費出せばいいの」
「家族だったらな」
そうであるならというのだ。
「出してもらってな」
「出すのね」
「お互いな、そんなものだよ」
「何か普通に言うけれど」
「普通だろ」
兄の返事は素っ気ない感じのものだった。
「もうこんなことはな」
「そうなのね」
「家族だったらな」
それならというのだ。
「もうな」
「そうなのね」
「だからな」
「それならなのね」
「今はいいさ、バイト代はお前が使え」
優しい顔での言葉だった。
「学費のことは気にするなよ」
「自分で使えばいいのね」
「ああ、それとな」
「それと?」
「無駄遣いはするなよ」
兄は妹に微笑んでこうも話した。
「バイト代もな」
「それは駄目よね」
「無駄遣いするとすぐにな」
それこそというのだ。
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