第3部
ムオル〜バハラタ
殺人鬼の謎
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離まで来た時だ。突然突き刺さるような視線に私はすぐに反応した。
「ねえ、今の!!」
「ああ。間違いない」
「え、なになに?」
「シーラ、戦闘の準備しておけ」
シーラ以外の三人が、視線の元がどこかを探り始める。シーラは魔力の感知は得意だが、魔力を持たないものの気配や殺気はわからない。私たちは自然とシーラを背にして取り囲むように陣形を作っていた。
「カンダタかな?」
「わかんねえ。でも、オレたちを殺す気満々みたいだぜ」
そう言うとナギはチェーンクロスを取り出した。ユウリもいつの間にか稲妻の剣を鞘から抜いている。私も鉄の爪を……と言いたいところだが、やはり慣れない武器では動きづらいため、素手で殺気の主が現れるのを待ち構える。
すると視界の隅の茂みから、殺気が膨れ上がるのを感じた。
「伏せろ!!」
いち早く気づいたナギが声を上げた。疑う間もなく、全員がその場にしゃがみこむ。
その間頭上で空を切る音が聞こえたので辺りを見回すと、すぐ近くの地面に柄のついた針のようなものが突き刺さっている。
あれがマーリーさんの馬を攻撃した、針だろうか。だが今は悠長に考えている場合ではない。
『今のを避けたか……』
「!!」
くぐもった低い声。それだけでカンダタかどうか判別するのは難しい。だが声のする方に目を向けつつも、いつどの場所からでも迎え撃てるよう、全方位に神経を集中させている。それはほかの皆も同じだった。
やがて、殺気を伴った人影が茂みからのっそりと現れた。それは、噂通りの覆面姿の男だった。カンダタと同じように上半身裸ではあるが、覆面の下から見える素肌は土気色をしている。スー族のジョナスたちも色黒ではあったが、それ以上に色が濃く、なにより血が通っている感じがしない。
私は直感的に、彼はカンダタではない、と感じた。それどころか、人間ですらない。
「ユウリ、あれって……」
「ああ。あいつはカンダタじゃない。魔物だ。しかも人の言葉を話すタイプのな」
『!!』
その言葉に、私たち三人は戦慄した。
――人の言葉を話す魔物。それはつまり、普通の魔物よりも知能が高く、強いということだ。
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