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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第一話 覚悟
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「今日はぴっくりしたわ。まさかルイズがあんな風にかあさまに意見するなんて」
「う……それは……わたしも自分で自分が信じられないわ」
「まあ、自分が信じられないなんてルイズは器用ね」
「……自分ほど信じられないものもないと思うわよちいねえさま」
「そう……」

 暫らくルイズの髪がすかれる音が響く。子犬も子猫も場を読んだのか、部屋の隅の方で丸くなって眠っている。

「でも、その様子だと大丈夫みたいね」
「何が?」
「ワルド子爵……裏切り者だったって聞いたわ。ルイズがショックを受けてないか心配してたのよ」

 ルイズは身体を後ろに倒し、カトレアの豊かな胸に後頭部を当てた。

「気にしてないわ。そんな昔のこと。言われるまで忘れてたぐらいよ」
「まあ。まるで大人の女のようねルイズ」
「まるでじゃなくて、もう立派な大人の女よ、ちいねえさま」
「そう……」
「だから、この戦争への参加も自分で決めたの」
「どうしても行くの」
「行く……例え反対されても行くわ」
「どうしてそこまで」

 ルイズはずるずるとベッドの上に身体を倒すと、カトレアに膝枕されているような状態になる。
 カトレアは膝の上から溢れた髪をすくうと、手に持った櫛ですき始めた。

「……わたしの使い魔……覚えてる?」
「使い魔? ……ああ……あの赤い服を着た男の人……」
「そう……エミヤシロウって言ってね。とても強くて優しくて……そして凄く……暖かい人」
「優しくて……暖かい」

 繰り返すようにカトレアが小さく呟くのを、ルイズは気づかない。

「今度の戦争……参加する理由はいくつもあるわ。祖国の危機。姫さまの手助け……だけど、一番の理由は違うの」
「それは、なに?」
「きっと、シロウはその戦争に行くから」
「え?」
「わたしが参加してもしなくても、シロウは絶対にその戦争に参加するから……だからわたしも参加するの」

 カトレアの手が止まる。

「使い魔さんが戦争に行くかもしれないから、ルイズは戦争に行くの?」
「大きな理由の一つとしてね」
「……」

 ルイズの言葉に黙り込んでいたカトレアが、ルイズから顔を背ける。

「……何で、その使い魔さんは戦争に行くのかしら……」
「シロウが戦争に行くのは……きっと救うため」
「救う?」
「……うん……死に行く人を出来るだけ救うため……死ぬ人を出来るだけ減らすために」
「救うために戦場に行くの? それは矛盾していないかしら」

 カトレアの言葉に、ルイズは身体を動かし顔を横に向ける。それは……カトレアから顔が見えないようにするため。

「……一人で……一人で戦場の一番前で戦うの……シロウは……そうして、自分だけで終わらそうとするの……」
「一人……で……」

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