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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第一話 覚悟
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「ッッ?! あいたふあぁぁぁっ?!」
「聞いてるのルイズっ! 」

 ぶつぶつと俯き、何やら呟いていたルイズの頬を、捻り上げ、無理矢理起こしたのは、ルイズの前の座席に座る、金髪が眩しい女性だった。歳は二十代後半だろう、顔立ちはルイズによく似ている。ルイズも気の強い方だが、こちらの方は見るからに気が強そうだ。美人な分、余計に迫力がある。

「なに一人ぐちぐち言っているのよちびルイズ。人の話しを全く聞かないで、一体どうしたのよ」
「うっ、そ、それは……何でもないわよ」
「何でもない〜〜? そんな顔して何でもないはないでしょ! 人が折角心配してやってるっていうのにっ!!」
「いふぁああい! いふぁいでしゅ! ごふぇんにゃさいねべばさああ!」

 頬を更にひねり上げられ、泣き喚きながら謝るルイズを見下ろすのは金髪美女。その正体ははルイズよりも十一歳年上の姉。ラ・ヴァリエール家の長女であるエレオノールであった。

「そもそもあなたは一体何を考えているのよ! 『祖国のために、王軍の一員としてアルビオン侵攻に加わります』? 全く、馬鹿なのあなたは! しかも報告するだけ報告して、従軍なんて許さないって何通もの返事を返したのに無視して! だからわざわざ私が来ることになったのよ! わかってるのちびルイズ! 聞いてるのちびルイズ!」
「きいてまびゅ! 聞いてまひゅうう!!?」

 そもそも何故ルイズたちがこんなところにいるのかというと、ことの発端は先月のアルビオン侵攻の発布から始まった。何十年振りかの遠征軍編成で足りなくなった士官を補充するため、王軍は貴族の学生を士官として登用することになったのだが、『虚無』の担い手であるルイズはその作戦のため、特別な任務を王宮から直々に与えられたのだが……。
 ルイズも戦争は好きじゃない。しかし、祖国の力に、姫さまの力になれればという思いから、その任務を拒否することはなかった。従軍することを決めると、そのことを実家に報告したのだが、どうやら実家の方は従軍に断固反対だという。祖国への忠義を示せるから、反対はされないと思っていたがそれはどうやら甘かったらしい。実家からの返事を無視していたら、とうとう実力行使に向こうが訴えかけ、こうしてエレオノールに捕まったというわけだ。もちろん使い魔である士郎も付いていくことになり、近くにいたというだけの理由でシエスタもそれに巻き込まれた。
 しかし、ルイズがこうも落ち込んでいる理由は実家が従軍断固拒否ということではなかった。そうではなく、自分たちの前を走る馬車に乗る人物が原因なのだ。
 前から士郎はルイズが戦うことをあまりいい顔をしていなかったが、今回のこともやはり駄目だった。ギリギリまで隠しておこうと思っていたルイズだったが、実家からの返事の手紙を開けたままそのままにしていた
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