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ハドラーちゃんの強くてニューゲーム
第9話
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破邪の洞窟地下3階での出来事。

人食い箱は困り果てていた。
人食い箱は本来、欲深な盗掘者を懲らしめる為に生み出されたモンスターである。遺跡の由来などお構いなしに無礼な財宝狩りを行う罪人を襲撃する事で、遺跡などを訪れる者達に礼儀を教えてやるのが、人食い箱の使命である。
だが、この目の前にいる少女(ハドラーちゃん)には自分を開けて欲しくないと言う懇願が、人食い箱の頭を支配する願いである。
が、ハドラーちゃんの足音は間違いなく人食い箱の方へと近づいていた。
人食い箱の脳裏に浮かぶ人食い箱の頭部(宝箱で言えば上半分)が鷲掴みにされて握り潰される光景が。
来るな。
来るな。
来るな。
来るな。
人食い箱の懇願を無視する様にハドラーちゃんがどんどん近づいて来る。
そして……ハドラーちゃんが人食い箱の前に立った時、人食い箱は自分がもう死んでいる事を確信した。
終わった……
だが、ハドラーちゃんは目の前の宝箱(人食い箱)を開ける事無く、残念そうに言い放った。
「せこいな」
せこい!?
解っていた事とは言え、そこまでハッキリ言うか!?
「そうやって自分の殻に閉じこもって強欲な弱者としか戦わん人生……つまらんとは思わんか?」
恐らく、歯に衣着せぬとはこう言う事を言うのだろう。
開ける前から目の前の宝箱(人食い箱)の正体を知っているが故の言い分なのだろうが、騙された愚者の見苦しい言い訳の様な悪口とは違う冷静で冷淡な一言に、当の人食い箱は目の前のハドラーちゃんとの覆し難い実力差を無視して飛び掛かりたくなる程の怒りが……
「どうした?こないのか?さあ、来いよ」
湧かなかった。ハドラーちゃんが言い放つ人食い箱への冷静で否定的な言い分が、更に人食い箱に覆し難い実力差を自覚させてしまった様だ。
もし宝箱に擬態する能力が無かったら、人食い箱は滝の様な冷汗をかいて大きな水溜りを形成していた事だろう。
「情けない。お世辞にも強者の戦いとは言えないな」
なかなか襲ってこない人食い箱にしびれを切らせたハドラーちゃんは、淡々と今まで経験に基づく強者の定義を語った。
「俺が今まで戦ってきた強者は、どんな逆境にも屈さず、与えられた名誉に甘えず、常に先の事を考え、馬鹿デカい慈悲を持ち、皆を惹き付けて魅了し、最期まで絶望しない者。だが、お前は違う。自らは動かず、相手の準備が整うのを待たず、騙されて落ち込む者の怒りを観て楽しむ」
そして、堂々とした態度で人食い箱にトドメの一言を言い放つ。
「卑劣で他力で無粋で孤独で弱々しい……つまらぬ者だ」
まるで期待外れと言いたげに人食い箱に背を向けるハドラーちゃん。
そんなハドラーちゃんの背中が異様に巨大に見える人食い箱。
(何だ……あの小娘は!?……惚れて……しまう……)
その時点で人食い箱は既に、ハドラー
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