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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
鋼の俊足
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形に残るものも今から用意しておけ」
 ちゃっかりお礼の要望までする勇者。そのとき隣にいたナギがぼそりと「やっぱあの陰険勇者、がめついよな」と言ってきたので私は吹き出しそうになり口を押さえた。
「わかりました。ええと、知ってることと言っても、犯人である殺人鬼は覆面で斧を持った大柄な男性のような風貌なのと、犯行に及んだあと町の東へと逃げていったということぐらいしかわからないんです」
 犯人の特徴を聞いて、四人は顔を見合わせる。どう考えても犯人はカンダタではないか。
「あと、被害者の詳細ですが、三日前に二人、二日前に一人、そして昨日一人被害に遭われました。一人目は左腕、二人目は両足を斧で斬りつけられ、三人目は頭を殴られ脳震盪、四人目は腕を折られたそうです」
「どの被害者もひどいな。死亡した人がいなかったのは幸いだったが」
「ええ、ですが皆この町の特産品の生産者で、別の町に作物を卸す道中で襲われたのです。まさかこんな短期間で四人の被害者がいるとは思わず……」
「どうしても他の町に卸さなくてはならないのか? この町で売ってしまえば町の外に出る必要はないだろう」
「穀物や野菜ならいいんですけどね。知っての通り、我が町は黒胡椒で生計を立てている人たちが多くいます。それこそ他の町や国に売れば莫大な売り上げをもたらしてくれるので、以前みたいに売れなくなるとその店や生産者だけでなく、町全体にも影響を及ぼします。例えば四人目の被害者であるマーリーさんは、隣町に黒胡椒を卸す途中殺人鬼に襲われ腕を骨折したんです。それでも売りたいからと、義理の息子のグプタさんに家業を継がせることにしたようですよ」
「えっ、グプタさんが!?」
 グプタさんとは、以前人買い……つまりカンダタたちに拐われた恋人のタニアさんを助けるため、私たちに協力をお願いしてきた青年だ。結局自分が助けると言って一人町を飛び出し、途中カンダタに捕まってタニアさんと一緒に牢に入れられたが、私たちが救出して二人とも無事に町に帰ることが出来た。あのときタニアさんの祖父のマーリーさんが、グプタさんに後を継がせると言っていたが、本当にその通りになったということだ。
「あのジジイ、とことん運が悪いな」
 ため息をつきながらユウリが同情の念を込めて呟いた。孫娘が誘拐されたと思ったら、今度は自分が殺人鬼に狙われるなんて、マーリーさんが気の毒過ぎる。
「ユウリ。マーリーさんの具合も気になるし、今から行ってみない?」
「ああ。ついでに黒胡椒が売っていれば言い値で買うぞ」
 ユウリにとってはそれがついでじゃないような気がするけど。私はそっと今の台詞を心の中にしまいこむ。
「こんな大変なときに突然来てしまってすまなかった。今からマーリーのところに行って、話を聞いてくる」
「本当に有難うございます。もし殺人鬼を捕まえ
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