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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
鋼の俊足
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り、武器を使うことが苦手な私にとって、それはユウリを怒らせないようにするよりも難しい。それどころか、慣れない武器を使うことによって、逆にいつも通りの力が出せなくなるかもしれない。
 でも、今のままでも足手まといなのだ。もしかしたら、という小さな期待と不安が胸の奥で揺らぎ続ける。
「……そうだね。ナギの言うとおり、使ってみようかな」
 私はすぐに鞄を開け、奥に埋もれた鉄の爪を取り出すと、利き手に装着した。途端に右手にずしりとした負荷がかかる。
 少し腕を振ってみるが、やはり動かしづらい。これでも毎日筋トレなどしているのだが、素手とは違うその重みに僅かに目を細める。
「ミオちん、無理しなくていいよ? 逃げたらその分あたしの『口笛』で魔物を呼び寄せるからさ」
 シーラの言う『口笛』とは、遊び人だった彼女が覚えた特技の一つで、吹くと魔物を呼び寄せることが出来る。しかしどの魔物がやってくるかはランダムで、メタルスライムが出てくるとは限らない。事実口笛を吹き続けること数十回。戦いを初めてから半日以上経っているが、メタルスライムが出てきたのはほんの数匹にとどまっている。
「オレもお前に武器の使い方を教えてやればいいんだけどさ、武道家用の武器は使ったことねえからなあ」
 ナギにまでそんなすまなそうな顔をされたら、いよいよ立ち直れない。
 なのにどうしてテンタクルスのときと、オロチのときは上手く攻撃が当たったのだろう。改めて思い返しても、無意識だったのか使い方が思い出せない。
 そうこうしている間に、空が赤味を帯びてきた。しかも、口笛で魔物を呼び寄せすぎたせいか、辺りに魔物の気配は全くない。
「タイムリミットだ。一度町に戻るぞ」
 無情にも、ユウリの声が終了の合図となる。皆の返事も待たず、彼はそのままルーラの呪文を唱えバハラタの町に戻った。
 ちょうど皆のお腹も空いた頃だったので、夕食をとることに。
 訪れたのは、見慣れたカウンターとテーブルが置いてあるバハラタのレストラン。もはや常連となったここでの食事は、旅先の中でも最も気安い空間となっていた。
 注文を終え、いくらもしないうちに男性の店員さんが来て料理が運ばれてきた。最初にこのレストランに入ったときにナギにスープをかけてしまった人とは思えないほど、彼は今やスムーズに仕事をこなす一人前の給仕となっていた。彼はユウリが注文した料理を音を立てずに置くと、さらにナギとシーラが頼んだ料理も手際よくテーブルに並べる。
「この一週間でメタルスライムを倒したのはたったの一匹だ。周囲の魔物の数も減ってきたから、明日は場所を変えるぞ」
 早速分厚いポークソテーを切り分けながら、ユウリが憮然とした態度で全員に告げた。ここのポークソテーは他の町とは違い、黒胡椒がまぶしてある。少し値段は高いが、黒胡椒好きのユウリ
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