第3部
ムオル〜バハラタ
鋼の俊足
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しまっている。
せっかくポルトガに戻り船を置いてヒックスさんたちに休んでもらってるのに、なんの成果も得られないまま一週間が経とうとしていた。
ぐいっ。
「痛っ!!」
「そしてお前は何をのんきにボーッと突っ立ってるんだ」
思考を中断され、勇者が思い切り私の髪の毛を引っ張ってきた。
「ううっ、だって、いつまでたっても攻撃が当たんないんだもの」
「物理攻撃ならこの中でお前が一番得意だろうが。お前がしっかりしてなくてどうする」
言い訳など許さない、という形相で私に詰め寄るユウリ。そこへシーラが私たちの間に割って入る。
「まあまあ、それだけユウリちゃんはミオちんに期待してるってことだよ☆」
「えっ、ホント?」
私は思わずユウリの方を見る。彼は動揺したがそれはほんの一瞬で、すぐにいつもの不機嫌な顔に戻る。
「こいつに余計なことを吹き込むな、ザルウサギ」
「あたしの名前はシーラだも〜ん♪ それにホントのこと言っただけじゃん☆」
そう言うとシーラは蝶のようにひらひらとこの場から去っていき、ベギラマで黒焦げになっているナギに回復呪文をかけ始めた。
「……」
シーラの相手をするのを諦めたユウリは、今度は私の方に顔を向け、物言いたげに見つめてきた。何か言われるのでは、と身構えていると、
「……あいつの言うことも一理ある」
そう言ってユウリは私から視線を外すと、自分から離れたところに行ってしまった。それってつまり、私に期待してるってこと?
「ありがとう、ユウリ。必ずメタルスライムを倒せるように、頑張るから!」
我ながらなんて単純なんだと思う。でも、ユウリに期待されていることが殊の外嬉しくて、ヤマタノオロチとの戦闘で揺らいでいた私の自信が少しだけ復活したような気がした。
「はあっ!!」
しかし、私の攻撃はようやく遭遇したメタルスライムに当たることなく、虚しく空を斬る。
そしてメタルスライムはこちらを見向きもせず、凄まじいスピードで逃げ去ってしまった。
敵の逃走に、私はがっくりとその場に項垂れる。
「大丈夫だよ、ミオちん!! 今の攻撃、もう少しで当たりそうだったじゃない!!」
「うん……」
その様子を痛ましく思ったのか、シーラが慰めるように声をかける。けれど今の私には、生返事で返すしかなかった。
これが初撃ならまだ言い訳出来るのだが、今の私の攻撃で四度目なのだ。しかも三度目までは他の三人の攻撃は当たっていたのだから、もし当たっていれば倒せたかもしれないのだ。このやりきれなさと気まずさに、私は頭を上げることが出来ない。
「なあ、せっかくだからお前の師匠がくれたって言う鉄の爪を使ってみたらどうだ?」
ナギの提案に、私は誰にも聞こえないほどの小さな声で小さな呻き声を上げる。鉄の爪……と言うよ
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