壱ノ巻
毒の粉
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、いつもの兄上の顔だった。
「どうしたんだい。何か怖い夢でもみたの?それともまさか昼間の傷が痛む?顔を見せて。瑠螺蔚。泣かないで…」
そっと優しく仰向かされる。
心配そうに眉を寄せた兄上があたしを覗き込んでいる。
母上に似た、高い鼻、長い睫、儚げな眼差し、さらさらの髪にすべすべの肌。いつもいつも女なのにかなわないなって思うぐらいに整っている面差し。優しくて、綺麗で完璧な兄上なのに、なんでこんな悲しい恋をしなきゃならないんだろう。
「マホって子が好きなの?」
兄上は今まで見たことがないぐらいに驚いて、大きく目を見開いた
あたしは構わず言い募った。
「姉上様よりも?どうして?姉上様は、兄上のことが本当にお好きだわ。一緒にいて、あんなに楽しそうに笑っていたじゃない。お優しい姉上様よりも、そのマホって子の方がすき」
最後まで言えなかった。いきなり、あたしは強く抱きしめられた。
「愛している」
耳元で兄上が言った。感情を抑えようとして、抑えきれずに零れたような声だった。
かっと頬に熱が集まる。思わず胸を押し返そうとしたけれど、ふと思った。
あたしをマホって人と重ねているんだろうか…。
「この世のすべてよりも大事だ。他の何にも代えられない位」
あたしの耳の上ぐらいに兄上の唇がそっと触れる。
優しく、愛おしく、その言葉が真だと証明でもするかのように…。
「瑠螺蔚、体が冷えているよ。戻りなさい。夜風は体に毒だ」
またその一瞬の後には兄の顔に戻ってしまう。
あたしの髪を優しくなでて、ふわりと微笑む兄上。
そんな兄上しか知らなかった。あんなに何かを求める兄上なんて見たことがなかった。
「どこの姫なの?」
「ん?」
「マホって、どこの人なの」
もうこの話を終わらせたいのだろう兄上は困った顔をする。
そりゃあそうよね。妹に自分の恋話したい兄なんていないわよね。
でも聞きたい。
それで、できるなら叶えてあげたい。
「瑠螺蔚…」
「教えて、兄上」
「サホ、…かな。サホの巫女姫だったかな。もう忘れたよ」
だった…、もしかして、もう、その人は…。
サホなんて聞いたこともないけれど、巫女姫ってことは一生神に身を捧げ、夫を持つ事はそもそも許されない姫だ。
あたしは言
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