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エヴァンゲリオン REAL 最後の女神
使徒大戦
第一章
1.03
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は地球を貫通して飛び去って行くことはなく……主人の目の前に到達すると、まるで慣性など無いかのごとく静止した。
 慣性制御《イナーシャルコントロール》。
 それが地上都市が救われた理由だった。
「……ロンギヌスの槍!」
「そう、これはボクたちの所有物《モノ》だからね」
 にやりと笑って、カヲルは右手を振りかぶった。それを振り下ろすと、まるで投擲《とうてき》されたかのように、槍がその延長線上を飛翔する。初号機の右胸に向かって。
「ぐはぅッ!」
 右胸を貫く信じられないほどの激痛にシンジはのたうち回った。ごぼっ、と気管が音をたてて喀血《かっけつ》する。高シンクロで肺をやられたのだ。
 だが、次の瞬間苦痛が消えた。
 いや、肉体──肺の破損による苦痛は残っていた。しかしそれはわずかな残滓《のこりかす》であって、先ほどまでの魂まで砕かれるような激痛と比べれば無いも同然だった。
「?」
 訳が分からずシンジはあたりを見回すと、エントリープラグ内の電源が落ちている。ただわずかに必要最低限の生命維持装置、通信機器、そして小さな外部モニターだけを残して。電源の強制切断によりシンクロが停止したのだ。
「……電源がっ……!」
 S2機関を初号機が取り入れてからマックスである8888を常に表示していたはずの残時間タイマーも消灯してしまっている。
「君と一つになるのは、すべての時が満ちてからだ。だから邪魔できないように力の実を奪わせてもらったよ。悪く思わないでおくれ」
「……カヲル君っ! ちくしょう、動け、動いてくれよ!」
 だがその叫びはカヲルに髪の毛一筋ほどの感銘すら与えられず。シンジは絶望と、貧血に青ざめる。
「そこで君の愛しい女性の死を、看取ってあげるがいいよ……」
「カヲル君! やめてよ! カヲルぅぅっ!」
──いいね、君の呪詛《じゅそ》は。たまらない。ゾクゾクするよ。
 カヲルはその身を歓喜にふるわせた。
 君の魂が絶望に染まると、それはどんな味がするんだろうねえ。カヲルは夢見るようにうっとりとした顔で、舌で上唇をなぞった。
 初号機のエントリープラグがわずかに揺れた。槍が引き抜かれる振動だ、とシンジは感じた。
 慌てて初号機のレバーを握り直す。しかし初号機は何の反応も起こさない。
 キャットウォークに立つカヲルのそばを、ゆっくりと槍が周回する。主人に従う忠犬のように。

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