使徒大戦
第一章
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機ではなかった。自分から後ろに倒れ込み、わずかにバランスを崩した初号機の腹を蹴り上げた。柔道でいう巴投げである。
壁面に叩きつけられる初号機。頭から床に着地。幸い角は折れなかった。角が折れたからと言って、別にそこに指揮官用機能が搭載されているというわけでもないので、困るわけではないのだが。
「ぐはっ……」
LCLの中に気泡まじりの苦鳴が漏れた。ある程度の衝撃はLCLが吸収してくれるが、まったくゼロになるわけではない。
けれども機体の損傷自体はたいしたことがない。気を取り直してシンジは素早く立ち上がる。いったん投げられて、頭が冷えるのを感じた。
カヲルの背信は許し難く、怒りは腹の臓腑《ぞうふ》に重く残っている。しかし、それよりも優先すべきは、アスカの無事のはずだ。そんな大事なことを失念してしまっていた自分が信じられなかったが、まだ取り返しがつかない状態ではない。手遅れではないのだ。あのときとは、違う──違ってみせる。
「アスカ……」
弐号機との通信は回復していないので、その声に応えるものはいない。
「もうトウジみたいに何もできずに見殺しにするなんてイヤなんだ。だから、たとえ君を傷つけても止めてみせる! そしてカヲル君を止める!」
罪を背負う覚悟が、鉛のように胃の腑に落ちた。下半身がしびれるのは、恐怖か。しかし、逃げないと決めた。歯を食いしばって、操縦桿を握る掌に力を込める。
シンジの意思に答えるように、肩からプロブレッシブナイフが射出され、右手に握りしめる初号機。
相対する弐号機もナイフを装備。
「はぁっ!」
初号機の中段突き。それをナイフで受け止める弐号機。高振動粒子で構成された刃同士の干渉波が火花として飛び散る。
弐号機が刃を傾け、力のベクトルをずらすと格闘に秀でていないシンジは簡単にバランスを崩してしまう。初号機が体を泳がせるところを、刃を返した弐号機の切り払いが襲う。
間一髪、飛び退いてそれをかわす初号機。反応速度自体は初号機のほうが上のようだ。
切り払った体勢から、その反動を利用した弐号機の左回し蹴り。もう一歩下がってそれもかわす。動体視力は初号機の目をつかっているため、集中力とシンクロが上がれば銃弾でさえ認識できる。左回し蹴りの蹴り足を軸足にかえて右後回し蹴りがくるのを、シンジは見えていた。
一歩踏み込むことで力点をずらし、威力を減退した蹴りを右手で受けると同時に、軸足を蹴りではらう。
バランスを崩して倒れ込む弐号機。だがその場で回転し、立ち上がりざまの上蹴りが初号機を襲った。カポエラ、それもヘジォナウの動きに近い。胸を痛撃されてたたらを踏む初号機。
「……強い」
いままでの力押しで技など無かった使徒とは別次元の、したたかな強さにシンジは冷や汗が流れるのを感じた。少し距離をとる。
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