使徒大戦
第一章
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、引きちぎられたように上半身だけがあった。その傷口の断面は、人の足や下半身のようなものが無数に生えていた。そしてその全体が、不健康に白く、水死体のようにぶよぶよと膨らんでいる。まともな感覚の持ち主ならば、吐き気を超えて精神に深刻な影響を受けかねない冒涜《ぼうとく》的な人間の戯画《カリカチュア》だった。
彼はその異形にさしたる感銘を受けたふうでもなく、ただ弐号機の掌の上から見上げながら、失意をつぶやく。
「違う。これは……リリス。そうか、そういうことか……」
弐号機の右手が異貌の巨人の胸に食い込む。抵抗もなく、あっけなく弐号機の掌は沈み込んでいく。
「!」
発令所に緊張が走った。
事情を深く知らされていない職員らからすれば、使徒と地下のアダム(と認識されていたもの)との接触はサードインパクトを起こすものと教えられていたからだ。そして、エヴァは使徒の似姿であり、模倣品であるという認識が暗黙の了解としてあった。ならば、その接触は──。
しかし、はたしてと言うべきか、何も起きはしなかった。
さらに深く、まさぐるように動かした弐号機の掌に、何かを握りしめるように力が入ると、白い巨人は静かに輪郭を失い、赤い液体《LCL》となって溶け落ちた。弐号機の足下の赤い水面に、主を亡くした七つ目玉の仮面が流れてきた。
「……リリスを餌にするとはね。ボクまでだまされてしまったよ。確かにアダムの伴侶、母たるリリスの悲鳴ならば、使徒《こども》たちは『呼ばれる』だろうね」
それきり興味をなくしたように、仮面に背を向けるカヲル。視線を来た道に向ける。ヘブンズドアの向こうの闇に。
「ふ、それにしてもシンジ君は遅いな」
その独白に応えるように──紫の鬼が闇の中から姿を現した。暗闇に光る双眼は、憤怒に赤く染まっていた。
「……いた!」
「待っていたよ、シンジ君」
「カヲル君!」
シンジの顔が奇妙に歪んだ。怒りと、殺意と、そしてそれでもまだ捨てきれない好意と──わずかな期待に。
パイロットの内心のためらいを振り捨てるように、初号機は疾風のごとく走った。弐号機の顔面を握りつぶさんとつかみかかる初号機の右腕を、自らの掌でもって受け止める弐号機。次いで伸ばされた左手も掌握し、そのままエヴァ同士の渾身の力比べが始まる。
先刻まで弐号機の掌の上にいたカヲルは、身軽にキャットウォークに飛び移っていた。優雅に観戦としゃれこむつもりらしい。
わずかに初号機の膂力《りょりょく》が上か、徐々に押し込んで行く。弐号機が膝をつく。さらに力をこめようと体重を込め、のしかかる初号機を見上げる弐号機。
一瞬、その弐号機の顔に、憎からず思っている少女の面影がよぎる。この機体はアスカのもの。アスカが搭乗したままなのだ。シンジの気がわずかに緩んだ。そして、その隙を見落とす弐号
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