使徒大戦
第一章
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客はシンジだけではなかった。幸いなことに弐号機が沈静化しているため、すでに崩落は休止していたので、生き残り整備員と警備兵がカヲルに従う弐号機を目撃していたのだ。
彼らはこの惨劇を引き起こしたのがフィフスチルドレンであったはずの少年である、という衝撃の事実が脳に染みこむと、しかるべき行動を選択した。それはすなわち、敵の殲滅、排除である。
このNERVという特務機関は半軍半民の組織だが、対使徒戦闘機関である以上、軍事組織的要素が強い。したがって警備部はもちろん、整備部も後方勤務とは言え兵士であった。有事の際に備えて用意されていた銃器庫のうち、弐号機の暴走に巻き込まれなかった者は、速やかに武装を完了する。そして死角からカヲルへのアタックを開始。
弐号機を操っているのがカヲルであるならば、攻撃を察知されないうちに狙撃にでも成功すれば簡単にカタがつく。
それは相手が普通の遠隔操縦兵器であれば達成されていたであろう。だが、弐号機を操っているのは機外のカヲルではなく、機内のカヲルだった。
弐号機の顔が襲撃者たちを向いた。その瞬間、襲撃者たちは、全員が『目が合った』と感じた。いままで何度となく整備し、分解し、組み上げて来たただの『機械』であったはずのそれの視線に、明確な意思の存在を感じたのだ。操縦者の意思ではなく、それ自身の──そう肉食獣にも似た純粋な殺意。
その圧倒的に高圧な視線に、戦闘訓練あるいは実戦をくぐり抜けてきているはずの兵士が竦<すく>んだ。文字通り呪縛されたように、動けなくなったのだ。それは捕食される側であった太古の本能を呼び覚まされたのか。そして、ただの震えるほ乳類となった人間たちに、神の似姿より死は無慈悲に与えられる。彼らが最後に網膜に焼き付けたのは、迫りくる巨大な掌<てのひら>だった。
カツン。
カヲルの足下に転がってきた物が、無粋な音を立てた。それは拳銃だった。ただし手首つきの。
カヲルは優しくその指をほどき、銃を取り上げた。もの珍しげに、しげしげとそれを眺める。
U.S.M9。かつでセカンドインパクトで沈む前のアメリカにおいて、軍で採用されていたハンドガンである。警備兵の中に米軍の生き残りがいて、愛用していたのかもしれない。
その銃を、カヲルはシンジの眉間に向けた。
シンジは目の前に突きつけられた銃口という名の死と向かい合い、震えながら、それでもそう訊かずにはいられなかった。
それは、いまのシンジにとってすがれるべき唯一の絆であったはずのものだったから。
「ボクのことを好きだって……好意に値するって言ってくれたじゃないか。あれは……あれは嘘だったの!?」
「嘘じゃないさ、シンジ君」
カヲルはいつものアルカイック・スマイルを浮かべたままで。
しかし銃口はシンジの眉間に照準<ポイント>され、
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