使徒大戦
第一章
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しかし、だからこそその冷静さが不思議だった。
「カヲル君? ……あっ!」
カヲルに問いかけようとした台詞のままで、シンジの口が凍り付いた。
その眼にとらえてしまったからだ。弐号機に押し広げられたガントリーロックブリッジが平衡限界を超えて倒落してくる様を。
巨大な質量が倒れる様子は、見た目にはとてもゆっくりだ。実際には早いのだが、そのスケールから比較される挙動が、小さく錯覚されてしまうためだ。
けれどもそれが余計にシンジの恐怖を喚起する。逃れられない死の影として。
──今から逃げても間に合わない……っ!
走る速度ではとうていその倒落速度を越えて逃げ切ることはできない。シンジは思わず眼をつぶった。
だが、いつまで待っても死神の大鎌が振り下ろされてくることはなかった。
「……?」
不審に思ったシンジが、おそるおそる目を開くと。
「……に、弐号機? どうして……」
シンジたちをかばうように、巨大なコンクリートと鋼鉄の固まりを支えていたのは深紅の巨人だった。次の瞬間、弐号機は、およそそこにかかっているはずの質量を感じさせないほど軽々と腕を振る。かぶさってくる毛布でもどけるかのように無造作に。腹に堪<こた>える振動と、盛大な騒音とともに、反対側の壁面に向かってガントリーロックブリッジが叩きつけられた。大量の粉塵と、コンデンサに蓄電されたまま逃げ場のなかった残電流の火花とともに、崩れ落ちていく。粉塵爆発がおきないのが、いっそ不思議なほどだ。
目の前で行われる破壊に魂を奪われ、シンジは言葉を無くしていた。
そのシンジに気がついた、とでもいうように弐号機がゆっくりと振りかえる。緑色に光る4つ目に人の意識を感じて、シンジは少し落ち着きを取り戻した。
「……アスカ……? アスカなの?」
ふるえる声に答えたのは、紅の少女でもなく、まして深紅の巨人でもなく。
背後にいた銀の少年だった。
ゆっくりとした足取りで、シンジの前に出る。ポケットに両手を入れたまま、自然体の立ち姿。しかしその存在感は弐号機を従える王のごとく。
「セカンドじゃないさ。残念ながらセカンドはもう弐号機に干渉することはできないからね」
「えっ……じゃあまさか……ダミープラグ……?」
「そんな無粋な言葉を使わないで欲しいね。紹介しよう、彼はボク。ボク自身の欠片<かけら>さ」
優雅に一礼するカヲル。そして、その動きと寸分違わずに同じ動作をする弐号機。
「!」
シンジは衝撃で目の前が暗くなるのを感じた。
これ以上ない手ひどい裏切りだと思った。トウジを手にかけさせたのが、カヲルだということなのか。いま、ネルフの人間の命を奪っているのも。
「カヲル君……どうしてなんだよ……。ボク達は友達になったんじゃなかったの!?」
弐号機とカヲルの一幕の観
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