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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第96話 狐の新しい職場
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佐の一人勝ちでして。実のところ私もおかげさまでちょっとは勝っているんですが、今期中に中佐昇進、国防委員会転属までは流石に予想できませんでしたぞ」
「カーチェント大佐はどう予想してました?」
「中佐昇進確実、実戦部隊から統合作戦本部広報部に転属、と言ったところですな」

 曇り一つないワイングラスの中をゆらゆらと赤ワインが揺れている。ドジョウ髭が以前より長くなったバグダッシュは、人の人生を舌に乗せながら、この店一番の赤ワインを堪能している。
 彼もまたエベンス達と同じように七年後のクーデターに参画する士官の一人だが、主義主張なんてものは生きるための方便と言い切った男だ。個人的には軽蔑の表情を隠さない現時点でのエベンスに比べれば、掌は反す為にあるとまでは信じていない程度に信用できる。だからこそ、幾つかの注文をしたわけで。

「で、どうです? 酔ってしまう前に、お伺いしておきたいんですが」
「お願いですから中佐が少佐にそんな丁寧語なんぞ使わんでくださいよ。慣れてないからホント気持ち悪いですぞ?」
 眉間に皺を寄せながら顔を引きつらせつつ、それでいてどこか楽しんでいるバグダッシュは、サマージャケットの内ポケットから五センチ四方の箱を取り出して俺のグラスの隣に置いた。
「ベースは民生と共通の規格ですからな。基本的な使い方も同じです。色は自分で塗ってください」
「ありがとうございます」
「どう使おうとも中佐のご自由ですがね。くれぐれも迷惑防止条例とか軽犯罪の証拠は残さんようにしてくださいよ。言わずともわかっとるとは思いますが」

 俺に向かって指した人差し指をグルグルと回すバグダッシュに俺は肩を竦めると、一度ふたを開け中身を確認し、すぐジャケットにしまい込む。そうしている間も、バグダッシュはテイスティングに勤しんでいたが、視線だけは俺の左右背後を警戒している。俺もバグダッシュの背面を何気なく一望した後、小さく頷いて促した。

「あの童顔(ベビーフェイス)ですが、情欲溢れる若いヴィクトールさんに申し上げるのは大変心苦しいのですが、おさわりはお止めになった方がいいでしょうな」
「セクハラになりますから端から触るつもりは毛頭ありませんがね。たぶんサイズはCかDだと思うんですが、もしかしたらFあるかもって……」
「見た目は結構おっきいって聞きましたがね。実はCの七〇なんですなぁ、これが」
「七〇……ええぇ……ホントにぃ?」

 ニッっと右の唇が上がり、バグダッシュの瞳に小さな光が宿る。明らかに変わった口調に合わせるように、おれも腕を組んでわざとらしく喉を鳴らして応える。

「お父さんは元警察官僚に近い人らしいですからね。ただ噂じゃ結構遠いところのご出身とか」
「遠いところ……それは……なるほど……」
「あくまでも噂ですよ? そっ
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