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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第96話 狐の新しい職場
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金髪。声もグレゴリー叔父によく似ていて、ケツ顎でなければ実兄かと思えるような容姿。しかし瞳は明らかに俺を値踏みしている。それが七年後に発生する軍事クーデターの幹部の一人であり、二重スパイでもあった男。

「補佐官付秘書官を務めますチェン=チュンイェンですわ。軍籍はございませんが、大尉待遇軍属になります。お気軽にチェンとお呼びください、中佐」

 膝上二〇センチまでしかない黒タイトスカートと第二ボタンまで外れた白シャツに、大きな胸が到底収まり切らないサイズのジャケット。お辞儀をすると隙間からピンク色の何かが見える。何処か転生前に画面の向こうでよく『観た』ような秘書姿。ピラート中佐の秘書官も務めており、引き続き俺のスケジュール『等』の面倒を見てくれるらしい、長い黒髪と細く小さいややタレ目の童顔アジア系の女性。

「ヴィクトール=ボロディン中佐です。本日より戦略企画室参事補佐官を拝命いたしました」

 右も左も分からない任地であるだけに、とにかく前任のスタッフに残ってもらうしかなかったのだが、もう見通しが暗黒一直線の人事。エベンスにしてもベイにしても、まだ三〇代前半だと思われるので専門分野では有能だとはわかる。あくまでも先入観は禁物だが、原作における彼らの行いを思い浮かべる限り、好意的になる要素が乏しい。

 その上、ピラート中佐との引継ぎの際にも、彼らは俺と顔を合せなかった。中佐と彼らの間に精神的な距離があったことは間違いない。ピラート中佐が言っていたように、エベンスには自らの信念と正義に溺れるような雰囲気がある。ベイは内心はともかく表面的には中佐に好意を持っていたとは思えない。

 より問題なのはチェン秘書官。事前に俺の権限で確認できる範囲での履歴は確認して不都合がないのはわかっていたが、見た目だけでも胡散臭いことこの上ない。こういう言い方は良くないことは分かっているが、ピラート中佐に対しても同様の態度だったとしたら、腹に一物抱えているとしか思えない。

「予算成立前の交代人事で、皆さんにはご迷惑をおかけしますがよろしくご協力を願います」
「「はっ」」
 改めて交わされる敬礼とお辞儀。だが差し当たって急ぎの用事のないエベンスとベイは退室し、チェン秘書官は部屋に残る。
「珈琲をお淹れいたしましょうか? ボロディン中佐」
「ええ、お願いします。良ければ秘書官ご自身の分も」
 一瞬だけ細い眉がピクッと動くが、すぐ何事もなかったように俺に微笑みかける。若い未婚男性なら『誤解』してしまいそうな微笑みだ。
「承知いたしましたわ」
 セクシーさ溢れる歩き方で併設キッチンに消えていくチェン秘書官を見送り、俺は唯一ピラート中佐が残していってくれたソファに腰を移す。

 具体的な仕事の内容も量も決められてはいない。質問取りレクも恐らく
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