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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第96話 狐の新しい職場
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てもらったり、細かい数値の算出をしてもらったりしなければならない。場合によっては参考人として要員にお願いして委員会に出席してもらわねばならないから、その調整役として質問側と回答側の間を取り持つ必要がある。

 文民統制の通り、当然のことながら国防政策局長は軍人ではない軍官僚であり、いわゆるキャリア組。国防委員会の実働組織の長だ。俺の処遇を巡って口を挟んできたのは(教唆した本人であろう)トリューニヒトではなく彼ら。軍政分野の中核組織でありその権限は実に強大だ。だが結局のところ『机上の戦略論』以上の軍事知識を持っているわけではない。そこをフォローしつつ統合作戦本部側との意見調整を行うのは、板挟みな立場が面倒とはいえ理解できる。

 残り二つはグレーな仕事だ。一〇〇歩譲って接待はまだ理解できなくもない。評議会議員やその関係者に限らず、より軍のことをより理解してもらう広報活動として普段行けないような基地や演習に招待したり、英雄と言われるような軍人達とのパーティーを開いて招待するというのは。

 だが軍事関連企業の利益分配調整は憲兵に手錠をかけられるレベルの話だ。原作でもアイランズに限らず評議会議員が軍事関連企業からのリベートを受けているが、その調整までしろというのはいかにも。はっきり言えば官製談合の取り持ち。中佐という階級にしてはちょっとお値段以上の『事務用什器やスポーツ健康用品』も、そのリベートの一部を流用しているのか、それとも企業から提供されたものか。その両方かだろう。確かに引継ぎファイルに書けるような代物ではない。

「君も潔癖症の類か。まぁ、そのうち分かるようになる」
 どうやら顔に出ていたのか、ピラート中佐は俺の顔を見ながら鼻で笑って言った。
「もうこの国はマトモに戦争などできやしないということをね」

 そんな引継ぎが行われてから二日後。ピラート中佐の引っ越しが終わってすっかり空っぽになったオフィスに入った俺は、早速『スタッフ』を呼び出した。

「ご着任、ご苦労様であります」

 オールバックにセットされたチャコールブランの髪。やや太めで鋭いの上がり眉。眉間に寄った皺。自らの信念は譲らないという意志のある力強い瞳に、中音域でも低めの声。

「戦略企画室参事補佐官補のダドリー=エベンス少佐であります。お会いできて光栄です」

 ビシッとした敬礼が逆に皮肉にしか見えない。言葉とは正反対の表情。今度は政治家のコネを使ってきた年下の孺子が俺の上官か、と言わんばかり。それが七年後に発生する軍事クーデターの幹部の男であり……

「同じく戦略企画室参事補佐官補のカルロス=ベイ少佐であります。これからよろしくお願いいたします」

 同じように隙のない敬礼だが、こちらは柔らかい(ように見える)表情。転生した今の俺と同じ髪型で
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