暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第96話 狐の新しい職場
[2/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
。舌打ちしたい気分だが、これは確かに俺が甘かった。そもそも軍令(統合作戦本部)と実働(宇宙艦隊司令部や星域管区司令部)とは違い、軍政(国防委員会)は軍の組織ではない。故に統合作戦本部も宇宙艦隊司令部もその構成員がほぼ軍人で占められているが、国防委員会は軍人の方がはるかに少ない。故に事前に話を聞けるような相手もいない。……財務委員会ならば結構いるんだが。

 それにアイランズが嬉々として伝えてくる……そんな任務がまさか情報部や公安警察のような文字を残せない繊細な任務だとは思ってもみなかった。こんな学生サークルの引継ぎ資料にすら劣るファイル、統合作戦本部内の部局なら査察部に提出するだけで任務軽視の証拠になって監察処分対象だ。

「何しろ実働部隊からの転属ですので、そのあたりの機微に疎く」
「実働あがりの士官は大抵ビームやミサイルを撃つだけが軍人の仕事だと思っている連中だ。頭が軽いのは元から承知しているが、回転が悪いのではどうにもならんぞ」

 ぬしゃあ儂に喧嘩ぁ売る気か、と微笑の仮面を浮かべながら胸の奥底で奥襟をつかんでボコボコにしつつ中佐を観察すると、果たして中佐は俺ではなくどうやら隣接する部屋との通用扉を、先程の軽蔑の視線が生暖かい眼差しに思えるくらいに冷え切った目付きで見つめている。ファイルにある間取りからすれば、その扉の先には『補佐官補』が控えているオフィスだ。俺が中佐と同じようにその扉に視線を向けると、中佐は先程と同じように鼻を鳴らす。

「扉の向こうにいる正義漢面した補佐官補共は、君とは違い後方勤務あがりだが、頭が固い上に融通が利かないときた」
「はぁ……」
「クソの役にも立たない奴だ。建前と信念だけでは個々の仕事は進まないと、理解できないわけでもあるまいに」
「……その、仕事についてですが」
 このままだとひたすら見たことのない補佐官補の愚痴を聞かされそうなので話を戻すと、中佐は口のへの字に曲げ腕を組む。気分を害したのは間違いないだろうが、口頭で伝達すると肯定した手前、言わないわけにはいかないという感じか。
「国防委員会に所属する政治家のケツ持ちと太鼓持ちだ。ゴルフと酒と女の扱いが上手ければなおいいが、それは追々覚えていけばいい」
「……は?」
 今、中佐はなんと言った? ケツ持ち? 太鼓持ち? 
「政権内野党や野党議員への質問取りレク。国防政策局長や国防委員会所属議員への各種フォロー。関係者の皆様の接待に、軍事関連企業間の利益分配調整。まぁ、そんなところだ。首席も同僚もいることだから全て君一人でやる必要もないが、パトロンの議員や企業は君が見つけるんだな」

 質問取りレクはわかる。一言で軍と言っても膨大な組織の集合体であり、国防委員会でスムーズな審議を実現する為には、質問内容を確認し、当該箇所へ回答文を作成し
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ