変態紳士
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」
「俺は君たちと話がしたいだけさ。君たちがなぜ戦い、なぜ願いを聖杯などというオカルティズムに満ちたものに託すのか」
「そんな質問をして何になる?」
ゲートキーパーは冷たく吐き捨てた。
「それで何かが変わるのか? 聖杯に疑問を抱いたところで、参加者である私たちは、それに願いを賭ける以外の道はないのだから」
「ノンノン。思考停止は愚か者の道だよ。万能の願望器。果たして本当にそんなものが存在するのか? あまりにもナンセンスじゃないか?」
「……」
その発言に、ハルトは押し黙った。
実際、ハルトは聖杯そのものを___少なくとも、聖杯戦争の運営が聖杯本体とみなしているものを目撃している。ルーラーのサーヴァントに力を与え、強大な敵となった過程をしっかりと目にしていた。
「それに答えるならば、聖杯が存在しないとは思えんな」
だがハルトの意外にも、ゲートキーパーが一足先にパピヨンの疑問へ答えた。
「ほう? それはどうして?」
「……まあ、答えても不利にはならんか」
ゲートキーパーは言葉を続けるよりも先に、自らの手を見下ろす。数回拳を握っては開き、その手を下ろす。
「私は病でな。本来はすでに死んでいる」
「病気……!」
「その私が、この別世界で、しかも病の症状が全くない状態でこうして立っている。それだけの力がある聖杯ならば、願いを叶える奇跡も起こせるのではないか?」
「なるほど。冷たい顔をしている割には、随分とロマンチストじゃないか? 君」
パピヨンが顔を低くしてにやりとした顔でゲートキーパーへ迫る。
一瞬彼女の周囲に氷が湧き出たようにも見えたが、机の上で翼を動かす蝶の存在に、彼女の冷気は収まった。
「……病。君の願いは、元々その病を治すことだったの?」
「……私の……願いは……」
ハルトが思わず口に出た言葉。だがゲートキーパーは、反発することなく押し黙った。
やがて彼女は、自らの首元に手を伸ばす。服の中に忍ばせてあったのは、銀色のペンダント。
ハルトもよく知る企業のロゴ入り。おそらくこの世界に来てから手に入れたものに、自らの手で中身を差し替えたものなのだろう。
「……家族に、また……」
ほとんど聞き取れないほどの小声。
だが、ハルトはその願いが、何となく聞こえた気がする。見えた気がする。
家族に、また会いたいと。
「それで? 君たちは何て言うのかな? ああ、参加者としての登録名じゃなくて、本名を教えてくれ☆ 俺も名乗ったのだから」
パピヨンって本名なのかよ、と心の中でのツッコミを封じ込めたハルトは、隣のゲートキーパーの様子を窺う。彼女は無言を貫いているので、口を開くことにした。
「松菜ハルト
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