変態紳士
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りにコーヒーを注文し、そのまま戸惑いながらカップコーヒーを両手で持つ彼女を連れ、変態紳士が待つ座席を探す。
「お前、本当に聖杯戦争の参加者か?」
二階への階段を登っている最中、ハルトのすぐ後ろを歩くゲートキーパーが問う。
「そうだよ。ほら、この通り。さっき俺にレジ打ちしてくれた店員がサーヴァントね」
ハルトは自らの右手の甲を見せつけながら答えた。
ハルトの右手に刻まれた、龍の顔の紋章。
それこそが、ハルトが聖杯戦争の参加者、マスターである証。令呪と呼ばれる、この見滝原にいる魔力が高い人間に刻み付けられる、地獄の舞踏会への参加券。
「本来なら、お前とはどちらかが斃れるまで戦うはずなのだがな」
「俺はせいぜい君が戦闘不能になるところまでって思ってたけどね。二階じゃないのかよ……!」
ぐるりと二階を探し終えたハルトは、そのままゲートキーパーへ「もう一階上だね」と連れて行く。
「……私を殺すつもりはなかったと?」
「言い訳らしく聞こえる?」
階段の利点は、周囲を壁に囲まれること。この段差を昇っている間だけ、周囲に会話が漏れることはない。
「単純な疑問だ」
彼女のその返答に、ハルトは足を止めた。
すぐ後ろの段のゲートキーパーへ振り返り、彼女の次の言葉を待つ。
「願いを叶えるつもりがないなら、お前はなぜ聖杯戦争に参加している?」
「まあ、当然そう思うよね……」
「私が倒してきた参加者たちも、それぞれ願いを持って戦ってきた。だがお前は、奴の誘いに反対することもなく、なぜここまで付いてきた?」
「……俺の願いは、別に叶える必要もないから、かな?」
ハルトは顔に薄い笑みを浮かべた。
「……叶える必要がない?」
「そう。叶える……理由もない」
ハルトはそれ以上を語ることはない。
あの変態仮面はどこだ、と三階を探る。
そして。
「やあ? 待っていたよ」
やはり視界に入れたくないタキシード仮面がそこにいた。
二つあるテーブル席をつなげ、その長い両足をテーブルに乗せながら、全身で壁際の椅子にもたれかかっていた。
「……テーブル席の意味分かってる?」
「もちろん」
にっこりと蝶の仮面の奥で笑みを見せる変態紳士。
ハルトは彼の足をどけて、そのまま変態紳士の向かいに座る。続いて、ゲートキーパーもまたハルトの隣に腰を下ろした。
「おや? 君たちはそれだけかい? ここのハンバーガーは絶品だぞ」
変態紳士は、二人のコーヒーを見下ろしながらポテトを摘まむ。
だがハルトは彼の言葉を無視し、逆に尋ねた。
「行きつけの店じゃなかったの?」
「行きつけの店だよ? 三日前から」
「たった三日前からかよ!」
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