暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ーBind Heartー
はじめてのフロアボス
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がるような呟き。
一方で、アスナはそんなトーヤを安心させるように肩を叩くが、顔だけは呆れ顔だった。

「一応転移アイテム用意しといてくれ。それと、トーヤは俺たちの後ろですぐ出られるように待機していろ」

「うん」

「はい……」

二人は頷くと、それぞれスカートのポケットや腰布の内側から青いクリスタルを取り出した。俺もそれにならう。

「いいな……開けるぞ……」

結晶を握りこんだ左手を鉄扉にかける。現実世界なら今頃掌が汗でびっしょりだろう。
ゆっくりと力を込めると、俺の慎重の倍はある巨大な扉は思いがけず滑らかに動き始めた。一度動き出した後は、こちらが慌てるほどのスピードで開いていき、すぐに大扉はずしんという重い衝撃と共に止まり、ナイフ間に隠されていたものをさらけ出した。
ーーといっても内部は完全な暗闇だった。俺たちの立つ回廊を満たす光も、部屋の中までは届かないらしい。冷気を含んだ濃密な闇は、いくら目を凝らしても見透かすことはできない。
すると、突然入り口からわずかに離れた床の両側に、ボッと音をたてて二つの青い炎が燃え上がった。思わず三人同時にビクリと体をすくませてしまう。
すぐに、離れた場所にまた二つ炎が灯った。そしてもう一組。更にもう一組。
連続的に発生したそれは、たちまち入り口から部屋の中央に向かってまっすぐな炎の道を作り上げる。そして、最後に一際大きな火柱が吹き上がった。薄青い光に照らされた室内は、かなり広い。マップの残り空白がこの部屋だけで埋まるサイズだ。

「……」

俺の後ろに隠れるトーヤが、一瞬にして息を詰めたのがわかった。その最奥から現れつつある巨大な影を、俺たちは確かに見たからだ。
見上げるようなその青い肌の体躯は、全身縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれている。分厚い胸板の上に乗ったそれは、人間ではなく山羊のそれだった。凶々しいほどにねじれた二本角。青白く燃えているかのような輝きをはなっている眼は、明らかにこちらを見据えているのが、かなり遠くから見てもわかる。その姿と周囲に撒き散らす威圧感は、まさしく悪魔と呼ぶにふさわしい。
おそるおそる視線を凝らし、出てきたカーソルの文字を読む。≪The Gleameys≫、間違いなくこの層のボスモンスターだ。グリームアイズーー輝く目、か。
そこまで読み取った時、突然青い悪魔が長く伸びた鼻面を振り上げ、轟くような雄叫びを上げた。ビリビリと振動が床を伝わってくる。右手に持った巨大な剣をかざしてーーと思う間も無く、青い悪魔はまっすぐこちらに向かって、地響きを立てつつ猛烈なスピードで走り寄ってきた。

「うわあああああ!」

「きゃあああああ!」

「ひゃあああああ!」

同時に絶叫を上げ、くるりと回れ右して全力でダッシュした。




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