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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第97話:シグナム2等空尉
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「いいな、シグナム」

俺が念を押すようにそう言うと、しばらくあってシグナムは小さく頷いた。
罪悪感を覚える光景ではあるが、やむを得ないと俺は自分を納得させる。
そのとき、俺の時計が小さな電子音を立てた。
時刻を見ると会議の始まる5分前だった。

「おっ、時間だな。行くか」

「・・・ああ」

シグナムらしからぬ弱々しい声で帰ってきた返事を聞いて、
俺は自分のカップに残ったコーヒーを一気にあおると、
デスクに戻って端末を小脇に抱える。
少しうなだれたシグナムを伴って通路に出ると、会議室へと向かう。
ちらりと後ろを振り返ると、少し肩を落としたシグナムが
視線を下に落として歩いているのが目に入る。
あまり見たことのないシグナムの様子に俺は思わず声をかけた。

「なあシグナム」

俺が声をかけるとシグナムはゆっくりと顔を上げた。

「何だ?」

「苦いの苦手なのか?」

何を言っているのかわからないという顔をしているシグナムに俺は話を向ける。

「コーヒー、飲めなかったろ」

俺がそう言うとシグナムはああというように少し天井を見上げると頷いた。

「そういうわけではないのだが、コーヒーを飲む機会が少なくてな。
 どうも慣れんのだ」

苦笑しながらそう言ったシグナムに、俺はシグナムが連絡役として
聖王教会との行き来を頻繁にしているのを思い出した。

「シグナムは教会に行くことが多いもんな」

「ん?それがどうした?」

俺が突然違う話題を振ったのでシグナムはワケが判らないようだった。

「いや、教会っつったらたいてい紅茶が出てくるイメージだからさ」

俺の言葉にシグナムは腕組みをして考え込むように目を閉じる。
その間も会議室に向かう歩みは止めていないのだが、
なんとも器用に他の隊員をよけて行くのを見て、いったいどうやっているのかと
不思議に思ってチラチラと見ていると、ふとシグナムの目が開かれた。

「そうだな。思えば主はやてが管理局入りする前から教会には
 頻繁に出入りしていたから、そのせいかもしれん」

そう言うとシグナムは遠い目で通路の前のほうを見た。
その表情はどこか遠いところに思いをはせているようにも見えた。

「はやてが管理局に入る前からってことは・・・相当前だよな」

俺がそう尋ねるとシグナムは小さくうなずいて俺のほうを見る。

「それで教会との連絡役はシグナムがやってたのか・・・。
 しかし、そんなに教会とのつながりが強いってことは、
 いずれはシグナムも聖王教会に入るのか?」

そう尋ねるとシグナムは少し考えてから首を横に振る。

「さあな。先のことは判らん」

「でも、半年もしないうちに6課は無くなるぞ。
 
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