第95話 大河手前の落とし穴
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もよって自分を嫌悪するバリバリのシトレ派というべきヤンの出世を招いてしまったのだから。
「ボロディン君! ボロディン君!」
いつの間にやらまた妄想の翼を伸ばしていたようで、心配そうな表情のアイランズが俺の左肩を揺すってくる。
「君には突発性難聴の気でもあるのかね? もしそうならいい病院を知っているが」
「突発性……難聴?」
「私が話しかけても、ずっと前を見て顔色一つ変えず平然としていたではないかね。無視しているというより、まったく聞こえていないといった感じだったぞ?」
なるほど。ウィッティやヤンそれに爺様は、俺がどういう人間かある程度知っているから、何か別のことを考えているんだと理解してくれるのだろうが、まだ会って日も浅いアイランズからしてみればまだ察しきれないというところか。
「ありがとうございます。是非ご紹介いただけるとありがたいです。先生のご紹介なら安心できますからね」
「そ、そうかね?」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。それで私にお話しというのは?」
「そう、そうだった」
左手の掌を右こぶしで叩き、その後で右手を開いて小さく振るアイランズに、それは「よし、わかった」じゃないんだ、と余計なことを思いつつ顔を向けると、アイランズは何故か得意げな表情をして言った。
「是非とも君の新しい任地を一刻も早く伝えてあげたくてね。どこだと思うかね?」
「……そうですね」
まともに答えるべきか、それとも適度に外すべきか、あるいはとてつもないOBを飛ばすか。袖口に録音機がありそうだと考えると、選ぶのは難しい。
「おそらくは国防委員会の片隅にはおいていただけるのではないかとは思うのですが……」
「んんん、惜しいな。だが片隅ではない」
首を左右に小さく振り、やや太めの右手人差し指がメトロノームのように振れる。
「国防委員会付属、国防政策局戦略企画参事補佐官だ」
ぶっちゃけて言えば、薔薇の騎士の色男に珈琲をぶっかけられる役、ということだろう。顔で笑顔を見せつつも、胃が急激にもたれるのを感じるのだった。
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