暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第95話 大河手前の落とし穴 
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
と思ったら、いきなり急停車。扉が開くと中から『ペニンシュラ』氏が転がり落ちるように出てきた。別に走ってきたのは車であって、お前じゃないだろうとは口には出さず、いつものように好青年将校スマイルに無念さのエキスを加える。

「先生。功績を上げ昇進しても、生死を共にした司令部から一人だけ外されて、次の任地もなく待命指示、というのはマトモな軍人としては結構ショッキングなことなんですよ?」

 まぁヤンならこれ幸いと歴史書の山に埋もれるだろうけど、アイツは元々『マトモな軍人』ではない。俺だって好きで戦争やっているわけではないが、誰にも話せない目標を達成する為には軍人になるしかなかった。

「それより『ペニンシュラ』先生。いったいどうなされたんです?」

 国防委員会に所属している評議会議員が、国防委員会所有の車に乗って統合作戦本部に来るのは別に問題ではない。だがまだ国防委員会でもまだ見習いのアイランズが、待命指示を受けいじけてトボトボ帰る俺を呼び止めにかかったというのは、あまりいい未来を予想できそうにない。促されて自動運転車の後部座席に乗り込むと、アイランズは肩を二度ばかり大きく動かして深呼吸する。

「君を待っていたんだよ! 全く。ホイホイプラプラと自分勝手に何処に行くんだね! ビュコック中将に聞けば、『儂は知らん、おまえさん方のほうがよほどご存じじゃろう』とか言いおるし、部下共も顔をつき合わせるだけでまるで役に立たん! まったく軍人共は不親切極まりない!」

 上から目線で早口でまくしたてるアイランズに対して爺様達が親切にする義理は何もないし、爺様にすれば余計な差出口で作戦参謀予定者を引き抜いた張本人は国防委員会じゃろうと、皮肉たっぷりに言い聞かせたんだろう。実にありありとその光景が思い浮かぶので、俺が含み笑いを漏らすとアイランズは眉間に皺を寄せる。

「君、何か私はおかしいことを言ったかね?」
「いや、先生。どんな状況だったか想像できまして……それより、私もその不親切な軍人の一人でもあるんですが」
「君は別格だ。任務に忠実で労を惜しまず、私みたいな政治家でも必ず立ててくれる」

 流石にその『よいしょ』は無理がある。トリューニヒトのスマートで自然な煽てには到底及ばない。逆に言えばあっさりと本音を俺のような若輩に漏らすあたり、マヌケかもしれないが素直な一面があるのかもしれない。

「先生をお待たせして申し訳ございませんでしたが、私もやはり『戦争屋』ですので、前線を離れるということに関して、正直言ってあまりいい気持ちにはなれないのです」
「君が『戦争屋』? 冗談を言っては困る」
 車がゆっくりと走り出し、景色が後ろへと流れていく中でアイランズは腕を組んだまま言う。
「君がマーロヴィアのパルッキ経済産業長官に提出した小惑星
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ