第95話 大河手前の落とし穴
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
この話をペンディングにすることは出来ないのでしょうか?」
「それは儂も考えた。サイラーズは同意してくれたが、アルベが反対した」
「そうですか……そうでしょうね」
シトレが大将に昇進するのがどうやら確実で要職も望める以上、玉突きで勇退させられることになるのは軍のトップである統合作戦本部長のアルベ元帥だ。シトレには昇進とシンパの艦隊司令官が増えることで妥協してもらい、要職への昇進については人事権のある国防委員会の方に媚びを売って阻止したい。なるほど地位の安定にとってはその選択がいいに決まっている。
「儂としては貴官の人事についての判断に『国防連絡調整会議』を開いても構わんとは思っておる」
「それは流石に止めておいた方がよろしいのではないでしょうか」
国防委員会(スーツ)と軍部(制服)で意見の相違があることはいつものことだが、担当者同士あるいはシェルパ同士そしてトップ同士で調整が付かないくらいにこじれた場合、双方が法務官僚・法務士官を立てて話し合うのが連絡調整会議だ。会議と名前はついているが実質は裁判所による調停に近い。やはり結論が出るまでに時間はかかる。
第四四高速機動集団の命令違反スレスレの戦闘行動は、国防委員会側としては徹底的に突っつける穴になる。特にシトレ(とヤン)は臨機応変と気にはしていないだろうが、マリネスク副参謀長を初めとして第八艦隊の幕僚には、第四四高速機動集団の行動を快く思っていない人間も多い。
ロボス派もこの場合は味方になってくれない。シトレの『シンパ艦隊』が増えることを快く思うはずがない。自分の『シンパ艦隊』が増える時も同じように干渉されるかもしれないが、事前に『今回は特別』と国防委員会側から含まれれば、手助けは控えようとするだろう。
統合作戦本部も宇宙艦隊司令部も、イゼルローンからカプチェランカと艦隊規模の戦を連続して行っている。損害は大きく、早いうちに艦隊の補充・整備を行いたい。予算が下りないとなれば大事だ。帝国側からの侵攻でもない限り、来期まで攻勢発起をするつもりは当然ない。
さらには軍後方勤務には国防委員会の影響力が大きい。法務士官が集まる法務部もその一つだ。彼らだって負ける可能性が高い調停なんてしたくないに決まってる。
つまり現時点で軍部は一丸となって国防委員会側に対応することができない。見事な各個撃破戦術だ。
それにしても国防委員会(恐らくはトリューニヒト)の俺に対する異様なまでの執着は一体何なんだ。一個制式艦隊の編成予算と引き換えにするほどの価値が俺にあるとは到底思えない。シトレ派に対する嫌がらせ、制服組に対する影響力の誇示というにしても、やはり編成予算と引き換えでは度が過ぎる。
「ジュニアがいずれ統合作戦本部や国防委員会に赴任することになるにしても
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ