第95話 大河手前の落とし穴
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官閣下の名声が軍内には轟いてるので、立身出世の期待が持てるという意味で、ですよ?」
前世云々抜きにして、さりげなく話を合わせるように俺がその視線に応える。
「……それは司令官の為人をよくご存じないからだろうな」
名刺のタワーをマスキングテープでぐるぐる巻きにして火炎ダストボックスに放り込んだモンシャルマン参謀長が溜息交じりに言う。
「艦隊司令官になるという『噂』程度で猟官活動するような人物を閣下は重用しない。扱き使われている君達ならわかるだろう?」
ハイともイイエとも答えにくい質問で返すモンシャルマン参謀長だったが、俺が返事に困っていると、含み笑いを浮かべた。
「だいたい司令官閣下が制式艦隊司令官になったとして、ここにいる全員がそのまま艦隊幕僚にスライドするとは限らないのだからね」
それは道理だろうが、爺様は面倒なことがお嫌いだ。ほぼ間違いなくスライドさせられる。単純に第四四高速機動集団を編成する時の五倍以上の戦力計算を行わなくてはならない。部隊編制にかかる日数は、一ケ月と見るべきだろう。また徹夜徹夜の日々が始まると考えると憂鬱になったが、溜息をつくまでもなく幕僚事務室の扉が外から開かれた。
「司令官閣下が入室されます」
扉の脇に立ったブライトウェル嬢の声に、俺を含めた幕僚四人は一斉に席から立ち上がり敬礼する。先に爺様が、あとからファイフェルが入室しブライトウェル嬢が扉を閉めると、爺様が答礼して普段滅多に使うことのない司令官用のデスクにどっかりと腰を下ろした。
「全員を司令官公室に呼ぼうと思ったが、やはり面倒なのでな。こちらで話す。今更だが公式発表されるまでは他言無用じゃ」
そういう爺様の声はいつもの意気軒昂とは真逆の諦観で満ち溢れている。
「一昨日、サイラーズ宇宙艦隊司令長官より小官に対し第五艦隊司令官職に就くよう内示があった。また昨日アルべ統合作戦本部長より第五艦隊の編制準備を速やかに行うよう指示があった。国防委員会による艦隊編制の承認はまだじゃが、いずれにしろ第四四高速機動集団は解散ということになる」
ギロッとした爺様の睨みが、幕僚全員に注がれる。
「幕僚諸君においては、ひとまずは第四四高速機動集団の解隊に向けて準備をするように。ついでに昇進にも備えておくこと。儂が面倒なことが嫌いなのは十分承知しているじゃろうから、『マトモな』友人知人をリストアップしておけ」
それは間違いなく再編成される第五艦隊の幕僚を選抜しておけということだろう。さっそく名刺の出番なのだろうが、爺様が釘を刺す以上、それなりの人間を選ばなければいけない。本当なら首席副官にウィッティを推挙したいところだが、本人はきっと拒否するだろう。残念ながら。
また再編成において充当される戦力の中核が第四四高速機動集団になることは
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