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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第95話 大河手前の落とし穴 
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 宇宙歴七九〇年 四月一三日 バーラト星系 惑星ハイネセン

 ウィッティに誘拐された高級レストランには、何とか仕事を抜け出してきた同期数名が手ぐすね引いて待ち構えていた。みな俺の生還を祝いつつも、その言葉の最後に高級ウィスキーのグラスを注文し、その返杯を俺は断ることもできず、一方的なタッグマッチになってあえなく撃沈。官舎の玄関に置き去りにされる羽目になった。俺が風邪をひかないよう、わざわざ砂漠迷彩柄の野戦用防寒シートを用意してくれていたのは、恐らく最初からそうするつもりだったのだろう。

 完全に二日酔いの状況で翌日。グレゴリー叔父の官舎に生還の挨拶に行くと、レーナ叔母さんには涙ぐまれつつも呆れられ、イロナには薬を無理やり飲まされ、またも土産を忘れたことに怒っているラリサに腕を引かれて、グレゴリー叔父のベッドに押し込まれた。結局グレゴリー叔父が帰ってきた夜半までぐっすりと寝ることになり、翌朝ようやくまともに話ができるという悲惨な状況だった。

 そして帰還三日目、グレゴリー叔父の家から第四四高速機動集団司令部に出勤することになった俺は、オフィスのある宇宙艦隊司令部に辿り着くまでに、何度も生還を祝福する声掛けと名刺攻めを受けることになった。

「君も名刺のファイルは要るか?」
 今なら安くしておくぞ、と上機嫌で艶々肌なカステル中佐が気持ちのいい笑顔で俺に言う。ちなみにカステル中佐のデスクの上にも一〇〇枚近い名刺が、何かのルールに従ってキッチリと並べて置かれている。
「聞いたこともない同期が、いきなり親しげな顔で急に声をかけてくるのは、ホント心臓に悪いよな」
 そう言って対面に座る無精髭のままのモンティージャ中佐は、名刺入れやポケットから机の上にバラバラとかなりの数の名刺を無造作にばらまく。
「噂話は早い。それが正しいか間違っているか、当の本人でも分からないのに。兵は拙速を貴ぶという事かな」
 参謀長席で一枚一枚確認しつつ、平積みしていくモンシャルマン参謀長の顔は、いつになく冷たい。

 まざまざと見せつけられる猟官運動。制式艦隊となればポストは山ほどある。それを埋めるにはどんな人間でも、今までの知己だけでは到底足りない。特に叩き上げの爺様の同年代はほぼ退役している。統合作戦本部人事部や宇宙艦隊司令部編制部などが動かせる独立部隊などの資料を揃えてくれたりはするが、その中でも僅かな知己を作るために現在の司令部要員に声をかけてくる。

「美味しい公共案件への飛び込み営業と考えれば、まぁこんなものじゃないですか?」
 俺がそう言うと、三人の奇異な視線が俺に集中する。確かにここにいる人達は軍以外の仕事はしていない人達だ。前世の日本社会における営業活動を思い出せば、規制が緩ければこうなるよなとわかるが、そうではない。
「それだけ司令
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