第131話『来訪者』
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ですから!」
「それなら魔術部をオススメした甲斐があったというものです」
最初こそ不安だったが、優菜が仲介してくれたおかげで刻ともかなり打ち解けた。さすがにそろそろ隠し事するのも申し訳なくなってきたし、文化祭が終われば魔術について教えてあげるとしよう。
「晴登君、どうかしましたか?」
「いや、何でもない。じゃあ、一番近い美術室から行こうか」
それはそれ、これはこれ。今は文化祭を楽しもう!
*
「ハルト! 見てこれ! 飛び出て見える!」
「それはトリックアートというものです。目の錯覚を利用したアートなんですよ」
「すごーい!!」
初めて見るものばかりで、目をキラキラとさせている結月。美術室に着くや否や、まるで遊園地にでも来たかのようなはしゃぎようだ。芸術が文化の垣根を越える奇跡的な瞬間と言えよう。
トリックアートの他にも、もちろん油絵や彫像なんかもある。どれも美術部の力作だ。晴登はあまり美術について造詣が深い訳ではないが、少なくとも見ていて退屈はしなかった。
「アートにも色々あるんだなぁ──あれ?」
歩きながら作品を眺めていると、ある一つの作品に目が留まる。それはとりわけ目立ったところのない風景画ではあったが、晴登にとってはちょっぴり思い入れのある風景だった。
「気づきましたか? 晴登君」
「だってこれって、GWの時の」
「そうです。覚えててくれてましたか」
「懐かしいな。完成してたんだ」
「はい。晴登君に早く見せたくてうずうずしてました」
あれはGWの合宿の時。たまたま出会った優菜と絵を描くために森の奥に入ったのが始まりだった。
天然の透き通った清流の中に、荒々しく大きな岩が聳え立つ。大自然を感じるその光景はそう簡単に忘れるものじゃない。
「なになに、何の話?」
「俺と優菜ちゃんが出会ったばかりの頃の話だよ。まだ結月とは会う前かな」
「へ〜聞きたい聞きたい!」
結月にせがまれて、ついこの間のことなのだが懐かしむように話す。
といっても、絵を描いている最中に熊に遭遇した記憶が強烈すぎて、それ以外はあまり覚えていない。
「"クマ"? "クマ"ってあの"オンベア"みたいな?」
「えっと……オンベアが何かわかんないけど、たぶんそんな感じ」
「へぇ〜。あんなのと戦った経験があるなら、ウォルエナ相手にやけに肝が据わってたのも納得だよ」
「いやいや、あの時もめちゃくちゃ怖かったからね?」
久々の異世界用語に困惑しつつ、今となっては武勇伝とも呼べる異世界での戦記を思い返す。
かつての自分は未熟で役立たずだったが、成長した今ならもっと上手く立
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