第3部
ムオル〜バハラタ
見張り台の上で
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もいい。けど、俺があいつを父親だと認めることで、少しでも心が救われる人がいるかもしれないことにも気づいた。だから、俺はその人のために、今はあいつを父親だと思うことにしたんだ」
「それは……、ユウリ本人じゃなくて、ユウリが大事に思っている人のためってこと?」
「……ああ」
ユウリは小さく頷いた。もしかしたらユウリ自身も、いまだ納得できる答えは見つかってないのかもしれない。だから今も自分がどうすればいいのか思い悩んでいるように見受けられた。そしてそれはきっと、ユウリ本人にしか解決できない問題なのだろう。
「じゃあ、兜を装備してないのって、もしかしてまだ完全にお父さんを父親だと認めてないから?」
「いや。ただあの兜のデザインが古臭くて装備するのが恥ずかしいだけだ」
「ええ……」
真っ当な理由があるのかと思いきや、予想外の理由だった。ある意味ユウリらしい。
「だから、別にお前が気に病むほどのことじゃない。まさかお前に気づかれるとは思ってなかったから、正直に話しただけだ」
そっか。私が気にしてるから、わざわざ教えてくれたんだ。
「……だったらいいんだ。ありがとう、話してくれて」
「お前が弱音を吐いて欲しいって言ってくれたからな。こんな些細なことでも話せるのは、お前だけだ」
そう言うとユウリは、今までにないくらい優しい眼差しで僅かに笑った。いつも私に目くじら立てて皮肉を言う彼とはあまりにもかけ離れていて動揺した私は、つい目を逸らしてしまった。
「ま、また何かあったら言って欲しいな。こんな風に綺麗な月の下でおいしいご飯食べながらお話ししてさ」
「そうだな。またお前と二人きりで食事をするのもいいかもしれない」
「へっ!? あ、うん!! そうだね!!」
まさかユウリの方から二人きりになりたいと言うなんて思わなかったので、つい変な声を出してしまった。
今まであんまり気にならなかったのに、なぜか今は胸の奥がやけどするように熱い。
私は空を見上げるユウリの横で、うるさいくらいに響く胸の鼓動を必死に抑えていたのだった。
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