第3部
ムオル〜バハラタ
見張り台の上で
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しょ」
自分が食べているところを人に見られるのがこんなに恥ずかしいなんて――。私は人生で初めて自分が食事している様を見られることに抵抗を感じ、今更ながら小さく口を動かした。すると、わざととぼけているのか、それとも本当に心配しているのか、真面目な顔でユウリが私の顔を覗き込んできた。
「さっきの勢いはどうしたんだ?」
自分から誘っておいて何だが、これ以上彼の隣で食べることに気まずさを感じた私は、急いで食事を終わらせることにした。
そうそう、食べてばかりじゃなく、そろそろ本題に入らなければ。私は口の中に残っている食べ物を急いで飲み込むと、最後のスープを飲み干して一息ついた。
「あのさ、ユウリ。最近トレーニングの回数が減ってるみたいだけど、何かあった?」
私の一言に、サンドイッチを口に運ぶユウリの手が一瞬止まる。やっぱり自覚しているらしい。
「……なんでわかった?」
私に気づかれたのがよほど意外だったのか、あっさりと認めるユウリ。
「なんとなく。……もしかして、あの兜をもらった時から?」
ムオルでオルテガさんの兜を手に入れて以来、彼はその兜を鞄にしまったまま一度も出していない。防具屋の主人いわく、その兜はとても腕のいい職人さんが作ったようで、防御力も相当高いのだそうだ。もちろん剣を扱うユウリは装備することができるはずだが、なぜか彼は一向に身に着けようとしない。なにか理由があるのかと思ってはいたのだが……。
するとなぜかユウリは額を押さえて難しい顔をした。何か葛藤しているように見える。
「お前は……。どうしてこういうときだけ勘が鋭いんだ」
よくわからないが、私はユウリにとって想定外のことを言ってしまったらしい。
ややあって、ユウリは躊躇いながらも口を開いた。
「……俺は、父親がどういう存在か理解できなかった。あの兜を手に入れるまでは」
そう言えば、もともとユウリはオルテガさんの遺志とは関係なく、自分の力を確かめるために魔王を倒す旅に出たと言っていた。ユウリにとってお父さんであるオルテガさんの存在は、他の人が思う勇者像とは少し異なっているのかもしれない。でも今のユウリの言葉だと、オルテガさんの兜を手に入れてから、彼の考えに変化が訪れたようにも見える。
「俺は今まで、親父を父親として考えたことはなかった。おふくろが親父の訃報を聞いて泣いたときも、何でおふくろを泣かせるのかと、いもしない相手に怒りさえ覚えていた。だからムオルで兜を見たときも、最初は何も感じなかった」
そこまで話して、ユウリは深く息を吐いた。
「だが、俺とおふくろに対する親父なりの想いが兜に刻まれていることを知って、初めて親父が父親だと認識できた気がしたんだ。だからといってすぐに考えが改まるわけじゃない。今でも俺の親父に対する感情はほぼ無関心といって
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