暁 〜小説投稿サイト〜
俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
見張り台の上で
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

??最近、ユウリの様子が変だ。
 今まで朝、昼、夜と船の上で欠かさず戦闘のトレーニングを行っていたのに、ここのところ顔を出さないことが多い。それでも私よりずっとトレーニングの回数は多いのだが、普段の彼に比べたら、明らかに頻度が少なくなっている。
 きっかけとなったのはおそらく、途中に立ち寄ったムオルでユウリのお父さん……オルテガさんの兜を手にしてからだと思う。
 倒れたオルテガさん(ムオルではなぜかポカパマズさんと呼ばれていた)を介抱した防具屋の親子から受け取ったその兜を、最初ユウリは受け取らなかった。けれど皆に薦められたということもあり、結局兜は受け取ることにした。私がユウリの立場なら迷わず兜を受け取るが、彼の心中はそんなに単純ではないようである。
 今も魔物が襲ってくる気配のない穏やかな海の上にいるにもかかわらず、ユウリはトレーニングもせずに自室にこもっている。様子を見に行こうにも部屋には鍵がかかっており、彼の今の状況を知る手立ては今のところ見当たらない。
「おいミオ。ぼーっとしてんじゃねえぞ」
 ぱしっ、とナギが放つ拳を、私は無意識に受け止める。今やレベル24になった私の武術の腕は、ナギの攻撃を難なく見切れるほど強くなっていた。といってもナギのレベルは私よりさらに上の26なのだが、素手での戦闘能力で言えば正直ナギよりも私の方が勝っているという自覚はある。その代わり私は武器を用いた戦い方が苦手なので、いまだにほとんど師匠からもらった鉄の爪を使わないでいる。
 攻撃を見切られたナギはというと、どことなく面白くない顔をしながら私を薄目で睨んでいた。
「ごめん。ユウリのことが気になって」
「ああ。そういえば今日は見かけねえな。道理で平和だと思ったぜ」
 ナギはナギで相変わらずユウリに対してドライである。私がトレーニングに乗り気でないことがわかると、ナギは拳を下ろした。
「ねえ、最近のユウリ、ちょっと変じゃない?」
 私の言葉に、ナギは首を傾げる。
「そうか? オレから見たら、今までと変わってないと思うぞ? 口うるさいのは相変わらずだし。昨夜だってオレにベギラマ当てやがったし」
 その時のことを思い出したのか、苦い顔をするナギ。
「まあ、お前が気になるってんなら、本人に直接聞いてみれば? そもそも、お前以外にあいつを気にしてる奴なんていないと思うけど」
 そう言うと、やる気が削がれたのか、ナギは「釣りでもしてくるわ」と言い残し、私の前から立ち去った。
 うーん、あんなにわかりやすいのに、本当に誰も気づかないのかな?
 試しに、食堂で遅めの昼食を食べているシーラのところへ向かった。
「え? ユウリちゃんが変?」
 他人の感情の機微に目ざといシーラのことだ。きっとユウリの異変に気付いているはずだろう。
「そうかな? あん
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ