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毒親じゃなくてよかった
第五章
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「長男さんだから喪主やるって思ってたそうなの」
「そんな人が喪主?」 
 有り得ないとだ、信也は即座に言った。
「無理だよ」
「それで次男さんがやって」
「面白くなかったんだ」
「何しろご自身が天理教のお世話になっていて」
 その時にというのだ。
「お母さん天理教の病院にいたのにお葬式は仏式で」
「そこ絶対に天理教だよね」
「お世話になってるならね」
「そうだよね」
「ホームレスから助けてもらって」
「凄い恩だよね」
「それまでもずっとね」
 こう言うのだった。
「助けてもらったのに」
「感謝していないで」
「お供えとかも一切ね」
「しなくて」
「ご飯だけ頂いて」
 そうしていてというのだ。
「そうだったの。ちなみに献血も一回もね」
「していないんだ」
「誰かの為に何かしたことは」
 こうしたことはというのだ。
「生まれてから一度もね」
「したことないんだね」
「そうした人だったのよ」
「ううん。凄い人だね」
「それで遂に誰からも見捨てられて」
 そうなっていてというのだ。
「今はs英勝保護よ」
「今度は税金無駄遣いしているんだ」
「ええ、とんでもない人でしょ」
「よくそんな人になったね」
 心の底から呆れ果てつつだ、信也は言った。
「つくづくね。何でそうなったのか」
「それね、実はお母さんがね」
「ああ、お葬式で喪主やるとかの」
「この人もまたとんでもない人で」
「遺伝したんだ」
「何かあるとヒス起こして喚き散らして」
 今度は母親の話をした。
「暴れて執念深くて遊んでばかりで家事も育児もしなくて」
「育児放棄?」
「そう、独立する時も長男さんだけ連れて行って」
「次男さん置いていったんだ」
「本家さんにね。三男さんもね」
「立派な育児放棄だね」
「アパートに引っ越したけれど」 
 そうして独立したがというのだ。
「一家でね、寝る場所がないって言って」
「長南さんだけ連れて行ったんだ」
「そうだったのよ、先生との面談でも家事は手抜きばかりで」
 そうした有様でというのだ。
「先生から本当のお子さんじゃないんじゃないかって」
「愛情が感じられなくて」
「そんな人でね、自分以外の生きもの全部大嫌いで不平不満ばかりで」
「言うことは」
「何かすると文句言ってしてやってるが口癖で」
「その人も最悪だね」
 信也は話を聞いてつくづく思った。
「本当に」
「こんな人が親御さんで」
「毒親だね」
「しかもこの人が甘やかして」
「毒親が甘やかして」
「とことんね」
「それでそんな人になったんだ」
 ここまで聞いて状況を完全に理解したのだった。
「成程ね」
「ええ、そうなのよ」
「いや、子供は親の背中見て育つっていうけれど」

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