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信長の理想
第二章

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 それで都に入り呆然している日々を過ごしていたが。
「何と、もうか」
「はい、瞬く間にです」
 まだ自身に仕えている家臣が都の彼の屋敷で言ってきた。
「都に上洛されましたが」
「あちこちに大軍を送ったでおじゃるが」
「今は天下の三分の一近くの国を完全に手中に収められ」
「治めんとしているか」
「一の人になられました」
 天下人にというのだ。
「そうなりました」
「驚いたでおじゃる、竹千代の言う通りでおじゃった」 
 義元は今は徳川家康と名乗っている彼の言っていたことをここで思い出した。
「織田殿はうつけどころかでおじゃる」
「非常に優れた方でありますな」
「そうでおじゃる、しかも政もよいと聞いているでおじゃる」
 彼が帖地では善政を敷いていることも話した。
「それではでおじゃる」
「織田殿は天下の傑物ですか」
「そうでおじゃる」 
 義元もこのことを認めた、そしてだった。
 信長を見ることにした、そんな中で。
 信長は領内を家臣を連れて見回っていた、そんな中で。
 軒下で寝ている百姓がいた、共にいた柴田勝家はそれを見てどうかという顔になって信長に対して言った。
「これは無礼では」
「何がじゃ」
「いえ、百姓が家の軒の下で、です」
 そこに潜ってというのだ。
「寝ています」
「そうか」
「怒って起こしますか」
 勝家は信長に言った。
「これより」
「ははは、よい」
 信長は勝家のその言葉に笑って返した。
「そんなことはせずともな」
「よいですか」
「そうじゃ」
 こう言うのだった。
「別にな」
「殿が通っておられるのに無礼でじゃ
「いやいや、わしはこう考えておる」
「どうお考えなのでしょうか」
「あの百姓は何故軒下で寝ておる」
 そこに潜ってだ。
「隠れる様にしてな」
「やはり賊なり落ち武者なりが来ればです」
「危ういからであるな」
「戦国の世ですから」
「昼寝をするにもじゃ」
 信長はさらに話した。
「用心せねばならぬな」
「この辺りも最近まで賊がおり戦も多かったので」
「そうであろう、だが泰平であるならな」
 賊がおらず戦もないならというのだ。
「外で堂々と寝られるのう」
「そうなります」
 勝家もその通りだと答えた。
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