氷結の白兎
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警戒を抱かせる。
大きく吠えたドラゴンへきっと口を食いしばった彼女は、力を込めて構える。
すると、より巨大な氷塊が彼女の背後に生成されていく。やはり規模が大きくとも、それは彼女の意思に反映してウィザードへ迫る。
それを見据えながら、ウィザードは足を軽くステップ。
すると、その体がゆっくりと浮かび上がる。胸元のドラゴン、ドラゴスカルの口に、非にならないほどの強烈な炎が沸き上がっていく。
足で軽くステップを踏む。
すると、炎の余剰魔力により、ウィザードの体が少しずつ浮かび上がっていく。
「はああああああっ!」
ドラゴンの口よりあふれ出す炎。
冬の世界に出現した太陽のように、白を照らし出していくそれは、やがて吹雪を掻き消していく。
それをじっと見守っていたゲートキーパーは、その手を広げる。すると、より大きな吹雪が、大きな咆哮とともにウィザードを襲う。
そして吐き出されるドラゴブレス。
強烈な炎と氷、大きな温度差が空間を満たしながらも、その二つはせめぎ合う。
「だあああああああああああっ!」
「……っ!」
ほとんど同等の威力を誇る二つ。互いに足場に力を入れながらも、せめぎ合いは均衡を保つ。
やがて。
「蝶……?」
その異変に、ウィザードは思わず気が反れた。
赤い炎と白い氷。二つの奔流の中に、突如として黒い蝶の群れが羽ばたきに割り入る。
それは丁度、ゲートキーパーにとっても予想外の出来事らしく、彼女の目もまた点になっている。
蝶の群れは、やがてウィザード、ゲートキーパーの間に満ちていく。
そして、蝶たちは一気に爆発。
突如の爆炎は、炎と氷をそれぞれの発生源である使用者ごと吹き飛ばす。
「ぐあっ!」
「うっ……!」
爆発によって、ドラゴスカルを造り出す魔力が霧散してしまった。
通常のフレイムドラゴンとなったウィザードと、手を引っ込ゲートキーパー。
互いに何が起こったのか理解が出来ていないところで、天より声が降って来た。
「ちょっと待ちたまえ、お二人さん」
冷えた戦場に全く似つかわしくない妖艶な声。
その声を見上げたウィザードが、変態だ、と真っ先に考えたのも無理はないであろう。
蝶の形をした面をした男性。ぴっちりとタキシードを(こんなに寒くなっているのに)着こなしながら、近くのビルの高いところから声を高々と上げた。
「蝶☆サイコー!」
見たくもない全身のシルエットがくっきりと浮かび上がってくる彼は、恥ずかしげもない笑顔で、ウィザードとゲートキーパーを見下ろしていた。
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