第一章
[2]次話
思わぬ高齢出産
実家に帰って両親から言われてだった。
大学生の小林妙子黒髪をロングにしていて大きな目と唇が印象的な明るい顔立ちで一五七程の背で均整の取れたスタイルの彼女は仰天した。
「お母さん妊娠したの!?」
「そうなのよ」
娘がそのまま歳を取った様な外見の母の百恵は笑顔で答えた。
「三ヶ月なのよ」
「お母さん五十二なのに」
「そして俺は五十五だな」
母の横にいる父の信一郎も言ってきた、面長で切れ長の目で癖のある赤髪で一七三位の背の痩せた男である。仕事は大きな林檎園を経営している。
「そうだな」
「高齢出産よ、生まれたら」
妙子は母のお腹を見つつ言った。
「私とは二十一歳離れていて」
「お母さんは五十三ね」
「その子が成人したら」
その頃はというのだ。
「お母さん七十三でお父さん七十六で」
「無理があるか」
「あるなんてものじゃないでしょ」
こう父に言い返した。
「大丈夫なの?」
「折角出来たから」
母は穏やかな声で答えた。
「やっぱりね」
「産むのよね」
「あんたは反対なの?」
「折角だし兄弟欲しかったし」
実は一人っ子で常にそう思っていたのだ。
「だったらね」
「あんたもいいのね」
「ええ、けれどね」
それでもと言うのだ。
「大丈夫かしら」
「絶対に育てる、っていうかな」
父は強い声で言った。
「今時七十過ぎても皆元気だろ」
「それはね」
妙子も否定しなかった。
「皆ね」
「だったらな」
「産んで育てるのね」
「ああ、母さんとも話したけれどな」
それでもというのだ。
「そうするからな」
「それじゃあね」
「ああ、絶対に育てるぞ」
父は決意していた、そしてだった。
母は実際に出産した、産まれたのは男の子で玄太郎と名付けられた。幸い両親は元気であってだった。
子育ては大丈夫だった、そして仕事も続け。
大学を卒業して家の林檎園に就職して実家にも戻ってしかも結婚して二人の息子ももうけた妙子はというと。
成人式を迎えた弟にだ、こう言ったのだった。
「いや、あんたがお母さんのお腹に宿った時は」
「どうなるか心配だったんだよな」
「そうよ」
若い頃の父そっくりの弟に答えた。
「大丈夫かって」
「お父さんもお母さんも高齢で」
「五十過ぎてたからね」
だからだというのだ。
「無事子育て出来るか」
「心配だったんだ」
「ええ、けれどね」
姉は成人式に出る為にスーツを着ている弟に話した。
「かえってね」
「僕が生まれて」
「それで子育てしてね」
そうしえというのだ。
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