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芸能界を去った理由
第二章

[8]前話
「引退したのよ」
「そうだったんですね」
「それでね」
 さらに話すのだった。
「大学に進学して」
「OLになられたんですね」
「そうよ。アイドルのままでいられるか」
 また言うのだった。
「そこから別の存在になれるか」
「女優さんなりに」
「私ドラマとかバラエティとかどうもしっくりいかなかったし」
 出演してもというのだ。
「そういうことをメインのお仕事にはね」
「出来ないですか」
「そうも思って。アイドルからどうなるか考えて難しいと結論が出たから」
「引退されたんですね」
「それで未練はないわ」
「もう、ですか」
「私未練はない方だから」
 そうした性格だからだというのだ。
「そもそもね」
「そうなんですね」
「今の生活もいいし」
「OLで」
「お仕事して日課のジムで身体動かして」
「サウナにも入って」
「それでね」
 そうしてというのだ。
「満足しているから」
「いいんですね」
「芸能界だけじゃないし絶対じゃないから」
「そうした場所ですね」
「引退してもね」
 そうしてもというのだ。
「いいわ、アイドルでなくても生きられるし」
「そういうことですか」
「ええ、何でもないわ」
「そうなんですね」
「それでね」
 さらに言うのだった。
「今はこれから水風呂に入って」
「身体冷やしますね」
「そうしてまたサウナに入るわ」
「その方がいいですね」
「ええ、それじゃあね」
「水風呂行きましょう」
「そうしましょう」
 笑顔で言ってだった。
 佐竹は水風呂に向かった、それに甲斐も一緒だったが佐竹の顔を見れば明るかった。未練がないことは明らかだった。
 佐竹はアイドルだったことも引退した理由も過去として話した、そして今を生きていた。未練がない彼女を見て甲斐も他の誰もがいいと思った。隠しても後ろを振り向きもしていないそうした姿勢を見て。


芸能界を去った理由   完


                      2023・12・19
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