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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第94話 愛情と友情 
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参加した三つの制式艦隊のうち、第五艦隊が最も損害が大きかった。艦隊司令部に犠牲はなかったが、麾下部隊の半数が消滅し、残りの半数も戦闘に耐えうる状況にない。残存艦艇は参加した他の艦隊に吸収されるか独立部隊となり、実働戦力としての艦隊は解散した。

 司令官は職責維持のままの待命の後、宇宙艦隊司令部から統合作戦本部へと移動となった。勇退(引責辞任)した宇宙艦隊司令長官リーブロンド元帥の子飼いの部下だったことで、いわゆる『バックを失った』形になり、艦隊司令官職を維持するには本人の実戦能力も政治力も周囲の評価では不足だったのかもしれない。

 そしてシトレがこの戦いでカプチェランカ星系の占領に成功し、想定外である不利な艦隊戦でも勝利した。爺様はアトラハシーズ星系とカプチェランカ星系の両方でその勝利に大きく貢献し、その艦隊戦指揮能力と戦略眼を改めて周囲に見せつける結果となった。シトレの大将昇進はほぼ間違いなく、その発言力は宇宙艦隊司令部でより大きくなったことで、爺様を制式艦隊の指揮官として推薦する空気(雰囲気)が出来た。シトレの『計算通り』に。

「まぁ統合作戦本部側も結果として前回のエル=ファシル奪回戦でビュコック閣下を昇進させなかったという弱みもある。第五艦隊のポストが空いたことと、シトレ『大将』の強い推薦を見て、サイラーズ大将も同意したんだろうな」

 それはまだ大尉のウィッティが知るには、あまりにも広くて深い事情だ。それはつまり……

「……クブルスリー少将閣下が昇進して、という話もあったんだろう?」

 俺の呟きに、ウィッティは口に含んでいたガムを飲み込んでしまった。胸を叩いて吐き出そうにももう食道を通り過ぎたのだろう、大きく溜息をついた後で額に右手を当てた。三分ほど俺とウィッティの間には沈黙が流れたが、先に小さく声を吐き出してからウィッティが口を開いた。

「あぁ、そうだよ。だが残念なことにクブルスリー少将閣下は、近年帝国軍との直接戦闘で功績を上げていない。元々内勤や警備艦隊で『堅実に』実績を上げてこられた方だから、それは仕方がないんだがなぁ」

 名前が挙がっているということは、クブルスリーの軍内における評価が『堅実』なだけの軍人でないことは間違いない。能力もさることながら部下に対して驕ることない性格は、フォークに対してですら誠実に道理を諭すほどで、部下達の信望は厚いだろう。結果としてそれが暗殺未遂を招いてしまうことになるのだが、言うまでもなく相当に『出来た人』だ。

 尊敬する上司が実績不足を理由に制式艦隊司令官になれなかったことは残念だったろうが、その出し抜いた相手が同室戦友の直上だということにウィッティも複雑な気持ちなのかもしれない。それでも笑顔ができるのだから、ウィッティの器量も大きい。

「だが俺が今回少
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