第94話 愛情と友情
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したとして、卒業するのは宇宙歴七九五年七月。ちょうどレグニッツア上空戦や第四次ティアマト星域会戦の頃になる。実戦部隊に配備されるのは(志願さえしなければ)さらにその一年後。帝国領侵攻の直前だろう。
やはり俺にとっての『タイムリミット』は帝国領侵攻になる。最善はとにかくそれまでにあの金髪の孺子を殺すか捕らえる。原作通りに未来が進み、俺が爺様の艦隊にこれからもお世話になるとした場合、そのチャンスは恐らく三度。第五次イゼルローン攻略戦とヴァンフリート星域会戦と第三次ティアマト星域会戦。
そのうち第五次イゼルローン攻略戦時は駆逐艦エルムラントU号の艦長だった。並行追撃時の乱戦の中で、小さな一駆逐艦を捕捉撃破するのはほぼ不可能。やはりヴァンフリートW−Uでもたもたしてるグリンメルスハウゼン艦隊を地上撃破するか、ウィレム坊や(ホーランド)を何とか口説き落としてまともに戦わせるしかない。
いろいろ予想できて出来そうにない未来に、憂鬱の溜息を一つ吐く。原作通り未来が進んでいるというのなら、俺がここまで成し遂げてきたことは全て、ただ原作に書かれていなかったことだけだというのか。
「そんなに上ばかり向いていると、涙が乾くぞ」
久しぶりに聞く同室戦友の声に肩を叩かれ、口を開けたまま首を傾ける。左襟の階級章は大尉のまま。
「はっ、泣いてなんかいねーし」
「お持ち帰りしようとしたら、親が出てきたのはさすがに不運だったな」
「『ウィッティ』」
「すまん。冗談だ、ヴィク。だからそうおっかない気配を出すな」
俺の声色が急に変わったのが分かったのだろうが、ウィッティは肩を小さく竦めると俺の隣に腰を下ろす。冗談を平気で言える仲ではあるが、今回の冗談は質が悪い。それが分かっているのか、座った後で小さく頭を下げてくる。詫びのつもりなのか、ポケットからガムを取り出してきた。それがアントニナの好きなブランドの商品だというのはわかるので、黙って一枚受け取る。
「ところで今回も活躍だったそうじゃないか。次は中佐だな。同期の出世頭だ」
「三万九〇〇〇余の犠牲を出した上でな。その上、ビュコックの爺様は着いて早々、宇宙艦隊司令部に呼び出しだ」
作戦の成果は恐らくクブルスリー少将あたりから耳にしていたのだろうから、呼び出し理由に考えられる司令無視の話を軽くすると、ウィッティは一瞬俺の顔を見て驚いた後、笑顔になって左腕を肩に回してくる。
「あぁ、それは良いニュースだ。ヴィクが心配するようなことはない」
「良いニュース?」
「おそらくビュコック少将閣下は、近く中将に昇進なされる。間違いなく空席になっている第五艦隊の司令官職に着任されるだろう。サイラーズ長官を長官室でぶん殴るような不祥事がなければね」
前回の第四次イゼルローン攻略戦に
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