聖夜編 悪魔の影と騎士の絵本 後編
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リスマスだというのに、ノバシェードも働き者だね。了解、すぐに向かう」
縁の冷たい声を背に受けた仮面の戦士――ジャスティアタイプ35番機、「仮面ライダーマレコシアス」。彼女は縁の指令に頷きながら、颯爽とビルの屋上から飛び降りて行く。軽やかに地上に降り立った彼女の眼前には、路肩に停められた1台のオートバイがあった。
狼の頭部を模したフロントカウル。その額に十字架の紋章が刻まれている、専用のオフロードバイク「ヴォルフクロッサー」。赤紫を基調とするその愛車に跨ったマレコシアスは、ハンドルを握り締めエンジンを始動させていた。車体後部のマフラーが火を噴く瞬間、彼女を乗せたマシンはマンハッタンの道路を勢いよく走り抜けて行く。
「……冬来たりなば、春遠からじ。いつか春が来ると思えば……この風も悪くない」
全身で冬の風と雪を浴び、仮面の下で頬を緩めるマレコシアス。彼女は次の戦場を目指し、聖夜の大都市を駆け抜けて行く。規格外の馬力を誇るヴォルフクロッサーは、瞬く間に最高時速の500kmに到達していた。その行き先を知るのは当人と、同質の力を持った悪魔達のみであった。
常軌を逸するヴォルフクロッサーの加速。その疾さが齎す猛風は、路傍に捨てられていた新聞紙を舞い上げている。その紙面には、新世代ライダー達の功績を綴る記事が載せられていた。
「さぁ……行こうか、ヴォルフクロッサー。私達にはまだ……やるべきことがある」
連日のようにメディアで報じられる、新世代ライダー達の華々しい活躍。その裏側で、人知れず悪魔の力を振るう闇のジャスティアライダー達。彼らの「暗躍」はまだ、始まったばかりなのである。
◆
――その頃。クリスマスパーティーがお開きとなったケンド家の寝室では、ベッドの温もりに包まれたモリーが寂しげな表情を浮かべていた。
そんな愛娘の側に寄り添うビリーの妻は、愛おしげな表情でモリーの頬を撫でている。僅かな灯りが、壁に飾られた新世代ライダー達の絵を照らしていた。
「パパとヘレン、大丈夫かな……。真凛みたいに……居なくなったり、しないよね……?」
「大丈夫よ、パパもヘレンもとっても強いんだから。……さ、そろそろ寝ましょうか」
真凛の失踪を察しながらも、父に心配を掛けまいと口を噤んでいたモリー。その頭を優しく撫でるビリーの妻は、娘を寝かし付けようとしていた。
しかしモリーの視線は、今年のクリスマスプレゼントである1冊の絵本へと向けられている。11年前の2009年頃に発売されて以来、密かに人気を集めている「隠れた名作」らしい。
「ねぇ、ママ……あの絵本、読みたいな」
ヘレンがこの日のために用意していたその1冊は、モリーが以前から欲しがっていた絵本なのだ
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