第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・後編(ユウリ視点)
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「だからかな。時々ミオちんやナギちんが、羨ましいって思うときがあるの」
確かに間抜け女の家族なんかはきっと、理想の家族なんだろう。バカザルも父親はいないが、ナジミの塔のジジイや母親はバカザルのことを考えて行動しているのがわかる。
「子供は親を選べないからな。俺も未だにジジイに対しては嫌悪感しか持てない」
「それってユウリちゃんのお祖父さんってこと? そんなにひどい人なの?」
「今思い出せるだけでも十回は殺されかけたな。勇者の修行とは名ばかりで」
「うわあ……。結構壮絶な人生歩んできたんだね」
「お前も似たような立場だと思うが」
「あたしなんか気楽なもんだよ。弟のマーリンの方が色々背負わされて大変だと思う。あたしは逃げただけだから」
「弟のあの性格ならそうでもないと思うけどな」
俺のもっともな感想に、なぜかシーラは苦笑する。そして、何か思い付いたように目を輝かせた。
「そうだユウリちゃん。ミオちんのところに婿入りすればきっと楽しいと思うよ♪」
「何の話だ!?」
突拍子もない発言に、俺は思わず声を荒げる。だが、目の前の賢者は俺の反応を楽しむかのようにニヤニヤしている。
「あたしたちが知らない間にるーくんとも仲良くなってるし、いい義兄弟になるかもよ?」
「お前……やっぱりアルヴィスたちと同じ人種なんだな」
「だって二人とも、全然進展ないんだもん。超ド級に鈍いミオちんはともかく、ユウリちゃんはもっと素直になんなきゃ」
「大きなお世話だ。それに、今は色恋沙汰より魔王を倒すためにやらなきゃ行けないことがある。下らん感情に振り回されて命を落とすことになったら元も子もないだろ」
そう、魔王を倒すのに、余計な感情は必要ない。一度芽生えたあいつに対する感情も、今は捨てた。そうしなければ、先へ進むことは出来ないからだ。
「うん。でも、否定はしてないよね。自覚はあるんだ?」
「……これ以上余計なことをしゃべったら、今まで立て替えてた分の酒代払ってもらうぞ」
「すいません出過ぎたことを言いました!!」
あっさり訂正するザルウサギに、俺は呆れた顔で息を吐く。
「お待たせ〜! ……二人とも、何かあった?」
帰ってくるなり、ミオは俺たちを見渡して訝しげな顔をした。
「別に。こいつが今まで俺が立て替えてた酒代を払うって話をしただけだ」
「そんな話してないよ!! ユウリちゃんの意地悪!!」
怒りを露にしながら俺に文句を言うシーラ。そこへ何も知らないバカザルがやってきた。
「お? 何か知らねえけどこの陰険勇者に苛められたのか? なんならオレがカタキを……」
「ベギラマ」
ごおおおおっっっ!!
「いや今のナギ全然悪くないよね!?」
やれやれ、うるさい連中だ。おちおち感傷に浸る余裕もない。
俺はすっかり忘れ去られた兜
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