第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・後編(ユウリ視点)
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るまでの間、よくポポタの面倒を見てくれてました。ポポタに会うたび自分の息子を思い出すと仰ってましたが、それはあなたの事だったんですね」
「……」
胸の奥に刺さる小さな違和感に、俺は心の中で頭を振る。
すると、何を思ったのか店主は親父の兜を持ち上げると、俺の目の前に差し出した。
「ユウリさん。これはやはりあなたが持つべきです。おそらくポカパマズさんは、この日のために兜を置いていったんですよ」
「いや、俺は……」
「ユウリ。私もこの人の言うとおりだと思う。だからユウリのお父さんはその言葉を残したんだよ」
横から口を挟んできたミオを一瞥すると、彼女はいつになく真剣な眼差しで俺を見据えている。
――こいつには見透かされたくない。俺は無意識に顔を背けた。
「ポカパマズさんがお兄さんの父ちゃんなら、きっとその兜はお兄さんに似合うと思うよ!」
そう言うと、ポポタまでもが俺に兜を受け取るよう勧めてきた。
ちらりと横目で見ると、後ろにいるシーラとバカザルも同じような雰囲気で俺を見ている。
いつもならこんな状況などはねのけて、自分の意思で決めるところなのだが、この時の俺には、いったい何が正解なのかわからなかった。
「……わかった。その兜は俺がもらう」
長考した挙句たどり着いた結論は、ポカパマズ……いやオルテガを父親だと認めることだった。
人生でほとんどかかわりのなかった父親の存在をこんな形で認めることになるのは些か不本意だが、悩んだ末に母親の姿が思い浮かんだ瞬間、これは俺だけの問題ではないのだと気づかされた。
あの時親父の訃報を聞いた母親が、本当にすべてを受け入れていたのか。俺の前では吹っ切れた様子だったが、本当はどう思っているのかわからない。だが、この兜に込められたメッセージを伝えることができたら、何か変わるのではないだろうか。
「そうですか! きっとポカパマズさんもお喜びになると思いますよ」
店主は安堵した様子で兜を俺に渡した。ずしりと手にかかる兜の重みが、兜だけのものではないような気がしてならない。
「お兄さん、ポカパマズさんに会ったら、よろしく言っといてね!」
「こら、ポポタ!!」
しっ、と嗜める店主に、息子はなんだかわからないといった様子で口を噤む。そしてそのまま店の奥へと戻っていった。
「すみません。どうかお気を悪くされないでください」
「構わない。こっちこそ気を使わせてしまってすまない。……ありがとう」
「とんでもない! ここでお会いできたのも何かのご縁です。道中お気をつけて」
店主に礼を言うと、親父の兜を受け取った俺たちは防具屋を後にした。
あれから荷馬車を取りに行き、ムオルを出たあと港町へと向かった。材木の仕入れを頼んだ船大工に話を付け、ついでに道中遭遇した魔物を討伐した
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