第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・後編(ユウリ視点)
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身内、という言葉に、ようやく俺は一つの可能性に思い至った。
俺は昔からよく母親似だと言われていたが、母親の髪は青みがかった黒髪に、ライトグレーの瞳。対して俺は、茶色がかった黒髪に、ダークブラウンの瞳である。母親でないとすれば、まさか……。
その瞬間、今朝がた見た夢の一部が脳裏に浮かぶ。火山の山頂で魔物と戦うあの黒髪の男。それは俺が幼いころ、母親のもとへとやってきた一人の城の兵士が口にしていた特徴とうり二つだった。
「あのー……?」
防具屋の店主が訝しげに窺う。はっとした俺は、咄嗟に言い訳を言おうとするが、上手く言葉に出すことができないでいた。
「彼の国じゃあ、こう言う髪と目の色は珍しくないんだよ☆ ね、ユウリちゃん?」
「あ、ああ」
機転を利かせたシーラが代わりに答えてくれた。こいつに助けられるなんて、今日の俺はどうかしている。
「あの、私たち、その人のことについて詳しく聞きたいんですけど、その人はいったいどういう人だったんですか?」
さらにミオが話を促してくれたおかげで、怪訝な顔を向けていた店主の警戒心が若干緩む。こいつにまでサポートされるとは我ながら情けない。
「確かポカパマズさんがここにいらしたのは、十年以上前のことです。ちょうど私は幼い息子と散歩をしていたんですが、村の入り口付近を通りかかったところ、彼が倒れていました。体中傷だらけで、私が呼びかけても全く返事がなかったんですが、幸い息はありましたので、急いで助けを呼び、家へと連れ帰ったんです。一目見て彼が歴戦の戦士だということはわかりましたが、なぜあれほどまでに傷だらけだったのか、結局彼は打ち明けてくれることはありませんでした」
戦士なら魔物と戦うことには慣れているはずだが、手強い魔物にでも襲われたのだろうか。
「それから彼の傷が癒えるまで、私たちは懸命に看病しました。当時ここには回復呪文を使える人もいなかったのでだいぶ時間はかかりましたが、二か月ほどで完全に回復できました。ですが、怪我が治ってすぐに、彼はまた次の場所に行くと言って村を出てしまったんです」
「どこに行ったかは、わからないか?」
「はい、何も……。ですが、回復する間、息子のポポタにはとても優しく接してくださいました。まるで故郷に残した自分の息子を見ているようだと」
その時俺は、夢の中の男の正体に気づいた理由を導き出していた。
「……そうか、ありがとう。仕事中邪魔したな」
俺は店主に礼を言い残すと、背中を向けた。
「あの、もしアリアハンに戻ることがあるのなら、この兜をポカパマズさんに渡してもらってもいいですか?」
店主の言葉に振り向くと、カウンターに堂々と置かれてある兜に目をやった。
「その兜は?」
「これはポカパマズさんが被っていた兜です。てっきり身につけて行くのかと思っ
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