暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その3
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、ドイツに入国した外人の全データーがあるはずだ」
「はいッ」 
 それとは別に、同じケルンには、連邦政府所管の外人中央記録保管所という施設があった。
ここではドイツに入国した全外人のデータが保管され、逐一記録されていた。
 後の1991年に露見することになるが、保管所の管理者はシュタージの工作員であった。
西ドイツに入国する人間の情報は全て、その日のうちに東ドイツに漏れていた。

 さて。
 地下一階の電算室では、謎の東洋人に関しての情報分析が行われていた。
操作卓を叩く音が部屋中に響き渡る。
「解析結果は出たか」
「へえ……」
電算室の事務官は、男にプリントアウトしたパンチカードを渡す。
「木原マサキ……。
日本帝国斯衛(このえ)軍第19警備小隊所属。
ほう……天のゼオライマーのパイロットか……」
男は資料をめくりながら、もう一人のサラリーマンに関して問いただした。
「この鎧衣左近とかいうサラリーマン風の男が臭い。調べてくれ」
「はい」
 ブラインドタッチで操作卓を打つと、ブラウン管に画像が映し出された。
そこには鎧衣の顔写真と生年月日が表示された。
NAME:SAKON YOROI
NATIONALITY:JAPAN
DATE OF BIRTH:16TH FEBRUARY 1945
 
「データはこれだけか」
「はい」
「臭いな。よし長官に相談だ」

 連邦憲法擁護庁は1950年にドイツ国内に作られた諜報機関である。
共産主義者による西ドイツ国内の反憲法的活動の監視を主目的に設立された。
 だが初代長官のオットー・ヨーンを始めとし、その多くがKGBやシュタージのスパイの浸透工作を受けていた。
故に、捜査情報が長官室に上がった時点で、KGB支部に通達されるという馬鹿げた事態に陥っていたのだ。
 1968年の学生運動「5月革命」以降、世論に迎合し、旧ドイツ軍関係者やナチス関係者を追放した。
新聞社向けのパンフレットなどを発行し、積極的な情報公開を行い、世人への透明性を高めた。
 また1972年以降は外国人過激派、極左過激派対策も任務に加わり、その存在意義ををアピールした。
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